日本代表、2010年への旅BACK NUMBER

日の丸への尽きせぬ想い。
~松田直樹、32歳の挑戦~ 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byToshiya Kondo

posted2009/08/16 08:00

日の丸への尽きせぬ想い。~松田直樹、32歳の挑戦~<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

中澤、闘莉王のバックアップとして、松田直樹は最適ではないだろうか

ジーコへの不満から代表チーム離脱の過去が。

 “忘れ物”とは――。

 2005年3月、埼玉スタジアムで行なわれたW杯アジア最終予選バーレーン戦。それまでのジーコの方針に不満を抑えられなくなった松田は、登録メンバーから外されると同時に指揮官の許可なく、チームから離れてしまうという前代未聞の事件を起こしたことがある。これを最後に、日本代表に名前を連ねることはなくなった。その後、誰よりも愛着を持っていた日本代表に傷をつけてしまったと自責の念にかられ、ジーコに対して謝罪の手紙を送っている。そのとき、彼は手紙に決意をこうつづった。

「もし今度、日本代表に選ばれるなら、チームのためにできることは何でもしたいと思っています」

 あれから4年。何年経とうが松田の思いは、今も変わっていない。

 日本代表選手として己の名誉を回復するには、代表に復帰しなければならない。そのために「ここ1、2年で勝負したい」と自分を追い込み、持病のある腰の状態をみながら、今年はパワーをつける体づくりにも取り組んできた。パウリーニョやディエゴがゴール前に侵入してきても食い止めてしまう日本人離れした身体能力は、いまなお錆びついてはいない。

経験豊富なベテランが日本代表にもたらすものとは。

 経験豊富なベテランとしての自覚だろうか、試合後には他チームの若手に声をかけることも多くなった。5月の大分トリニータ戦の試合後、連敗街道を抜け出せない大分の守備を支える森重真人に、こうアドバイスを送っている。

「大分はJ2に落ちるようなチームじゃない。上を向くか、下を向くかはお前次第だぞ」

 この言葉に森重が勇気づけられたことは言うまでもない。

 松田の考えるベテランの役割とは?

 02年の日韓W杯本大会でメンバー入りを果たした秋田豊、中山雅史というベテラン2人の存在が、松田の念頭にあることは間違いない。

 松田は以前、日韓W杯を振り返って、こんなことを言っていた。

「ゴンさん、秋田さんの存在がやっぱり大きかった。あの2人が一切、手を抜かないで練習をやるわけだから、オレたちが手を抜くことなんてできなかった。声は出すし、明るい雰囲気はつくってくれるし。チームには欠かせない存在だった」

 このとき中山34歳、秋田31歳。苦境を乗り越えて、あのときの2人と同じぐらいの年代になったことで、松田は「チームのために自分ができること」とは何なのか、ようやく分かってきたのではないだろうか。

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