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勝利に貪欲なチームが甲子園を制す。
~初優勝を目指す逸材たち~ 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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posted2009/07/30 11:30

勝利に貪欲なチームが甲子園を制す。~初優勝を目指す逸材たち~<Number Web> photograph by SPORTS NIPPON

聖光学院の4番、四家祐雅(3年)は1年秋からレギュラー。長打力とチャンスに強い打撃が魅力だ。強肩の外野守備も堅実。

 勝利に対するモチベーションが高いチーム、という視点で夏の甲子園大会を占ってみよう。異なる学校による同県勢の春、夏連覇に挑戦するのが長崎日大(長崎)だ。昨年、好投手・伊波翔悟を擁した浦添商(沖縄)が史上初の快挙をめざしたが準決勝で涙を飲んでいる。はたして長崎日大は清峰に続く全国制覇が達成できるだろうか。

 春、夏いずれも優勝の美酒を味わっていない県からは、青森山田(青森)、花巻東(岩手)、聖光学院(福島)、明桜(秋田)、酒田南(山形)、日本文理(新潟)、山梨学院大付(山梨)、日本航空石川(石川)、敦賀気比(福井)、鳥取城北(鳥取)、立正大淞南(島根)、都城商(宮崎)などが地元に初優勝をもたらそうと目論んでいる。ちょうど10年前の1999年、沖縄尚学(春)、桐生一(夏)という優勝未経験地区の伏兵が続いて全国制覇を成し遂げ、高校野球ファンをアッと言わせている。10年を節目と考える記録好きには当然、今年も起こってほしい快挙である。

菊池を擁する花巻東が本命か。

 注目される好選手も紹介すると、投手では斎藤英輔(青森山田)、菊池雄星(花巻東)、山田修義(敦賀気比)、崎田聖羅(立正大淞南)、島袋洋奨(興南)、打者では四家祐雅(聖光学院・外野手)、河野元貴(九州国際大付・捕手)、今宮健太(明豊・投手&遊撃手)、河野凌太(明豊・外野手)が既に「大会屈指」と形容されている。

 これを前出の「モチベーションが高いチーム」と合致させると、青森山田、花巻東、聖光学院、敦賀気比、立正大淞南が注目校として名前が挙がってくる。

 花巻東は春の準優勝校で、同校のエース・菊池は大会ナンバーワン投手としてメジャー球団も食指を伸ばすほどの逸材。春の大会での前評価は“伏兵”にとどまったが、夏の大会はばりばりの“本命”に挙げられることは間違いない。

 知名度はないが敦賀気比の左腕、山田の潜在能力も高い。昨年春のセンバツでは投手より打者の素質が上回っているように見えたが、1年経って体作りが進み、ストレートにドラフト候補と形容できる力強さが備わってきた。

 打者では聖光学院の四家に注目だ。非常にゆったりとした動きでボールを迎える懐の深いバッティングは、緩急にかかわらずどんな球でも対応できる。打球の速さも一級品で、ホームランも狙える強打者である。強肩を誇り、外野からの矢のような返球も見ものである。

大阪代表は低評価を吹き飛ばせるか。

 これらの高校以外では、夏2連覇がかかる大阪代表校の戦いぶりにも注目したい。「ドラフト」という視点で見ると今年の近畿地区、とくに大阪は「人材払底」と書かれても仕方がないほど逸材が少ない。そういう世間の低評価を吹き飛ばす意味でも今大会は頑張りどころである。

 ちなみに、同都道府県勢による夏連覇は近年では'04、'05年優勝の駒大苫小牧(南北海道)が記録しているが、異なる学校による連覇は'74年(銚子商)、'75年(習志野)の千葉県勢までさかのぼらなければならない。大阪勢による夏連覇はないので、これも挑戦するだけの価値がある。

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