オシムジャパン試合レビューBACK NUMBER
キリンチャレンジカップ2007 VS.カメルーン
text by
木ノ原句望Kumi Kinohara
photograph byNaoya Sanuki
posted2007/08/27 00:00
4位に終わった先月のアジアカップ以後、初めての試合となった、8月22日の大分で行われたカメルーン戦で、オシム日本代表監督は新しい顔ぶれを試した。それが、アジアカップでの戦いぶりを受けて、さらに来年2月に始まる2010年ワールドカップ予選へ向けて、チーム作りを模索してのことだったことは言うまでもない。
先発リストに名を連ねたのは田中達也、前田遼一、大久保嘉人の3人のFW勢。彼らをそのまま3トップとして並べる布陣で臨んだが、彼らは持ち前のスピードと機動力を発揮して、チームに新しい可能性をもたらした。
田中や大久保がサイドからドリブルで攻め込み、前田が前線で起点となって彼らと絡む。カメルーンが、長旅の疲れと時差の影響のせいか、前半は彼ら本来の動きよりも鈍かったようだが、日本の新3トップが大柄でフィジカルも強く、個人技もあるカメルーン選手をものともせずに、縦へ積極的に深く切り込むプレーは、久々にダイナミズムを感じさせるものだった。
その彼らの動きがチームを活性化させ、前半25分の先制点を生み出したと言っていいだろう。
前線で動き回る田中達也が左サイドでDFビギーに倒されて、FKのチャンスを得た。そのFKをMF遠藤が、ニアで相手のマークに競り勝ったDF闘莉王の頭に合わせて、ボールは飛び上がったカメルーンGKスレイマスの頭上を越えてネットに突き刺さった。
この5分後にも、日本はDF加地―田中とつないで右サイドを崩し、ゴール前に走りこんだ大久保へパスを出し、相手DFが慌ててゴール前でクリアに入る場面を作った。
試合後、「一部の選手が予想以上に興味深いプレーをしてくれたことが収穫」とオシム監督は話したが、それは、ハーフタイムで予定していた交代を見送ったFW陣を指すと解釈してよいのではないだろうか。
また、試合終了間際に代表チームの通算900得点目となる追加点を決めたMF山瀬も、冷静で思い切りのいい一撃で、ほぼ一年ぶりの復帰戦で存在を示した。
ただ後半は、カメルーンが反撃に出てくると、チーム全体として相手のプレッシャーを受けてボールを失う場面が増え、何回か危ういシュート場面も相手に与えてしまっていた。
カメルーンの攻撃は指揮官には想定内で、試合前日も、相手の攻撃におされた場面を想定した守備の練習に時間を割いていたという。だが、実戦で、失点をしなかったのはその成果とも考えられるが、チームとして十分対応できていたとは言い難い。加えて、ハーフタイムで1人交代させた後、後半15分過ぎからは次々と5人を交代投入したことで、多少チームが混乱したようにも見えた。言い換えれば、人が代わり、このクラスの相手に反撃に出られると、自分たちの技量を十分発揮できなくなる段階にあるということか。
「日本がつまらないミスでカメルーンのチャンスをお膳立てしていた。それは基本的なスキルやボールタッチのテクニックが低いため」とオシム監督は指摘し、「そこを実戦で出せるかどうか。そういう面では、日本のサッカーはまだまだ子供。プロの国際試合で起こるべきではないミスが起こっていた」と嘆いた。
FW陣の収穫もあったが、課題も改めて提示された試合で、「何ができて、何ができないかがはっきりした」とオシム監督は言った。言い換えれば、何をさらに磨いて、何に取り組まなくてはならないか、ということだろう。
また、宿題の時間だ。