濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
K-1の隆盛がもたらした、
格闘技界の“ムエタイ回帰”現象。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byGBR
posted2010/01/30 08:00
1月23日「REBELS」、ムエタイのテクニックであるヒジ打ちを使いこなし、ムエタイ戦士をTKOに追い込んだ梅野源治
ファンを楽しませる“ムエタイ攻略論”の多様性。
日本でムエタイを見る楽しみの一つは、日本人選手の“ムエタイ攻略”だ。分厚い選手層とハイレベルなテクニックを持つムエタイ戦士を、日本人選手がどう攻略していくのか。その方法論にもマニアックな面白さがある。
5対5マッチの大将戦に登場した増田博正は、得意とする左ストレートとローキックでコントラーノン・エクシンデコンを圧倒。最後は左ローキックでKO勝利を収めた。ミドルキックとヒジ・ヒザを軸とするムエタイにはないスタイルで勝利を収めたのだ。
一方、ここまで8戦全勝の新鋭・梅野源治は、増田とは正反対の形でラジャサクレック・ソーワラピンに勝利した。序盤からミドルキックとヒザ蹴りを連打して主導権を握り、ヒジ打ちでTKOを呼び込んだのだ。
ムエタイルールでは、K-1ルールよりも使える武器が多い。それだけファイトスタイルも多様化し、“ド迫力の倒し合い”だけではない攻防の妙を味わうことができる。その“深さ”に気付いた人間にとっては、ムエタイは決して退屈なものなどではないのである。