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大本命を打ち砕いた、伏兵の力。 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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photograph byIML/AFLO

posted2004/07/02 00:00

大本命を打ち砕いた、伏兵の力。<Number Web> photograph by IML/AFLO

 「サッカーは常にベストのチームが勝つとは限らない」

 試合後、オットー・レーハーゲル監督はこう言い放った。その通りだ。サッカーはとても不公平なスポーツで、いくらボールをキープしようがシュートがバーを叩こうが、点を取らなければ意味はない。この日のチェコはボールを回してはいたが、肝心の得点はできなかった。チェコの2トップ、バロシュとコラーにはそれぞれセイタリディスとカプシスがマンマーク。一人余ったデラスも的確なコーチングで最終ラインをコントロールしていた。

 前半3分にロシツキーのシュートがバーを叩くなど、序盤はネドベドやバロシュを中心にチェコが猛攻を見せた。点が入るのは時間の問題かと思われた。しかし前半33分、ペナルティーエリアでDFと接触したネドベドが倒れる。悲痛な表情を浮かべ、グラウンドに横たわるネドベド。その後一旦はプレーに復帰するが、前半40分にキャプテンマークをポボルスキーに託し、スミチェルと交代した。ターニングポイントだった。「パベルの負傷退場?もちろん大きく影響した。世界最高の選手が抜けたのだから」試合後にヤンクロフスキーはこう語っている。

 後半に入ってからも試合はチェコが支配。後半35分にはダイレクトパスの交換からロシツキーがぺナルティーエリアに侵入、フリーのコラーにパスを送るもシュートは枠の外に。ベンチには足を引きずりながら飛び出し、悔しがるネドベドの姿もあった。

 ギリシャもセットプレーを中心にチャンスを作る。後半22分にはFKからブリーザスがヘディングシュート。GKがキャッチするも、チェコのマークに甘さが見られた瞬間だった。さらに延長戦13分、ギリシャのFKはデラスの頭を捕らえる。ヘディングシュートははじかれたが、チェコDFのマークのズレは次第に大きくなっていく。そしてそれから2分後、ギリシャの右CK。カーブがかったボールにニアで合わせたのはまたしてもデラス。今回はボールはゴールへと吸い込まれ、「私のキャリアで最高のゴール」という決勝点が生まれた。

 「勝利に値したのは僕らだ。決勝でポルトガルと当たっていたらスペクタクルな試合になっていただろうに・・・」悔しさをこらえネドベドは言う。しかし決勝へと進んだのは、格上を相手にベストの対応をしたギリシャだった。

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