スタジアムの内と外BACK NUMBER
東京ドーム・エキサイトシート係員の独白
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byShoichi Hasegawa
posted2005/04/26 00:00
本日は、北海道日本ハム対東北楽天戦、東京ドーム・エキサイトシートへ、ようこそ。えっと、お客さんの席はこちらになります。ご覧の通り、この席はネットがありませんから、お手元にあるヘルメットとグローブをご着用の上、打球の行方にはじゅうぶんご注意ください。……えっ?お客さんは左利きですか?すみません、今ご用意いたしますので、しばらくお待ちください。なお、携帯電話は座席を離れてコンコースでご使用ください。また、ビールはイニングの合間にしか買えませんので、ご了承ください。
実は僕、エキサイトシートの係をするのは今日が初めてなんです。今日ドームに来たら、シフトがここになっていて「ラッキー!」と思いました。バイト仲間の何人かは、ジャイアンツ戦で、もうここの担当になったことがあったんで、ずっとうらやましいなと思っていたんです。時給ですか?えぇ、スタンドの場合と同じです。でも、お金の問題じゃないですよね。
えっ、何ですか?あぁ、この赤いモノですか?これは警笛です。ものすごい大音量なので、今鳴らしてみせることはできませんが、半径10メートルぐらいのところに打球が来たら、これを鳴らしてお知らせします。さぁ、小笠原選手が打席に入りましたよ。こちらに飛んでくる可能性がありますからぜひ、注意していてくださいね。……あっ、左利き用グローブが届きました。それでは、ゆっくりとご観戦ください。
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バイト仲間の間では、ジャイアンツ戦の場合、「ローズに気をつけろ!」が合言葉になっていますね。ローズ選手の場合、鋭い打球が飛んでくることが多いので、お客さんも油断をしていたら危ないんです。由伸選手については、あまりそういうことは聞かないですね。あっ、そうそう「清原選手にも気をつけろ!」というのは聞いたことがあります。清原選手の場合は、ファースト守備のケースですね。一塁ファールフライを追ってくる姿は、実に迫力があるそうですよ。
幸いにして大きなケガや事故というのは今のところないようです。こちらにライナーが飛んでくることは数試合に何度かある程度のようですし、ファーストへのファールフライも意外と少ないですね。だから、お客さんも最初のうちは、きちんとヘルメットをかぶって、グローブを手にしているんですけど、ほとんどボールは飛んでこないし、だんだん鬱陶しくなるのか、試合中盤には外してしまう人もいるようですね。アッ!
ピー!ピー!ピー!ピー!ピー!
なんてことを言っていたら飛んできましたね(笑)。ねっ、この警笛すごい音がするでしょ?僕ら係員はヘルメットしか身につけていませんし、お客さんもネットがない分危険性が高いわけですから、やはりスタンドでの仕事とは緊張感が全然違いますね。でも、ほとんどのお客さんが、とても喜んでお帰りになるようですよ。今日は、日本ハム戦だからか、少し空席がありますけど、ジャイアンツ戦はすぐにチケットが売り切れてしまったようですから、大人気ですね。さぁ、横山投手が出てきました。そろそろ、試合も終わります。お客さんも最後まで楽しんでください。
……こうやって見ると、普通の内野ゴロでも新鮮に感じられますね。今まで普通に見ていたゴロでも、すべてが「地を這うような打球」に見えますし(笑)。このフェンスの高さは1メートル10センチですから、本当に選手と同じ目線で見る野球なんです。お客さんは日本ハムファンですか?今日はSHINJO選手のホームランも見られたし、試合にも勝ったし、いいゲームでしたね。内緒ですけど、僕もちょっと興奮しちゃいました。いつもよりも疲れましたけど。まさに「エキサイト」なシートですね(笑)。それでは、お気をつけてお帰りください。またのご来場をお待ちしています。