チャンピオンズリーグの真髄BACK NUMBER
チャレンジャー精神の差が勝敗を決めた。
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byPanoramiC/AFLO
posted2004/06/08 00:00
5月26日、ゲルゼンキルヘンで行われたチャンピオンズリーグ決勝は「立ち会い」で決まった。正攻法で臨んだポルトに対し、モナコは受けに回った。
ベルナルディ、ジコス、シセ。モナコのスタメンには3人の守備的MFが名を連ねた。敗因はそこにある。
4−4−2の布陣の中にこの3人を収めるということは、両サイドハーフのどちらかは、彼らのうちの一人が占めることになる。攻撃力低下は否めない。シセが担当した右は、まさにその状態に陥った。
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モナコの右といえばジュリーだ。左のロテンとで織りなすサイド攻撃に、大型の2トップが中央に飛び込むスタイルこそが、このチーム最大の魅力だった。
攻撃は美しい上に迫力があった。この決勝ではそれが発揮できなかった。悔いが残る敗戦だった。
この日、右の主役、ジュリーは2トップの一角として出場した。今季のチャンピオンズリーグで7点を叩き出しているプルソは控え。準決勝、準々決勝も同じスタイルだったが、この時は通常右サイドバックを務めるイバーラが右のMFに入っている。攻撃的センスのある右のスペシャリストとして、彼は役不足なく活躍。ピッチにはモナコらしい図が描かれた。
決勝戦の図は対照的だった。右からのスピーディな攻撃はゼロ。本来の右サイドバックに起用されたイバーラが、時に後方から攻撃参加を試みたものの、あくまでも散発で、遅効のオプションに過ぎなかった。攻撃は左サイドからに偏った。一言でいえば、守備的な策に出たわけだ。欲が出た。そう受け取られても致し方ない。
23分にジュリーが怪我で退場すると、立ち会いのミスはよりデフォルメされた。代わって、大型FWのプルソを投入したのは良いが、パスの送り手は相変わらず左からに限られた。プルソの魅力まで半減した。
ポルト対モナコはいってみれば、チャレンジャー同士の対決だった。ポルトがその精神を貫いたのに対し、モナコは色気を出した。レアル・マドリー戦に臨んだ時の顔はどこへやら。決勝のモナコは、逆にレアル・マドリー的になっていた。非効率的な攻めを繰り返し、カウンターで失点を重ねる試合ぶりは、ビッグクラブが小さなクラブにやられる図とダブって見えた。
ポルトは「3トップ」が活躍した。カルロス・アルベルト、デルレイ+デコ。彼らが2−1の関係になることは稀で、デコは常に高い位置で構えていた。自ずと、彼にマンマーク気味でついていたモナコの守備的MF・ジコスは、引き気味な対応を迫られた。4バックというより5バックに近い状態に陥った。右MFで起用されたシセがますます内に入る理由でもあった。このデコのポジション取りは、他ではそう見られないアイディアだった。大きな勝因の一つだと僕は見る。