野球善哉BACK NUMBER
勝つべくして勝った中京大中京。
「一球一打」への異常な集中力。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2009/08/25 12:05
「甲子園ドラマ」をねじ伏せた河合、執念のキャッチ。
日本文理は好機をつぶされ、中京大中京は6点をもぎ取った。そして、得点した直後の日本文理の反撃を1点に留めた。この6回表裏の攻防は、中京大中京の「一球一打」が如実にもの言う結果となったわけだ。
10―4でむかえた9回表、日本文理は2死から反撃に出る。四球が絡んだとはいえ、一気に1点差としたのは奇跡的とさえいえる。「これぞ甲子園ドラマ!」という猛反撃であった。大歓声に包まれるスタジアムの雰囲気に、今大会堅守が光った三塁手・河合完治でさえも、ファウルフライを見失ってしまったほどだ。
しかし、1点差の2死一、三塁。8番・若林の快音を響かせた鋭い打球は「飛んできそうな感じがしていた」という河合のグラブにノーバウンドでおさまった。2時間半の壮絶なドラマがエンドマークをつけた瞬間。
「一球一打」。
中京大中京の強さは、まさにその瞬間に極まった。