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アジアでの収穫、北京への課題。 

text by

後藤健生

後藤健生Takeo Goto

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posted2007/12/13 00:18

 西アジアの古豪サウジアラビア、このところ台頭著しいカタールと同じグループCに入ったオリンピック最終予選は予想以上の激戦となり、3強同士の対戦成績はまったくの互角。ベトナム相手に2勝した日本が辛うじて抜け出して北京への切符を手にした。

 最終戦も、移動や時差、寒さなど悪条件が重なっていたにもかかわらず、サウジアラビアがその能力の高さを示し、日本は苦しめられ続けた。前半9分のピンチに青山敏弘の奇跡的なクリアがなかったらどうなっていたことか……。

 しかし、最終戦ではU-22日本代表の大きな進歩を見て取ることもできた。

 後半の43分、どうしても1点が必要なサウジアラビアはボランチの選手に代えて、FWのアルハウサリを入れ、2トップから3トップに変えてきた。すると、本田圭佑が1列下がって、すぐにそれまでの3バックから4バックの形に変えたのだ。そして、本田がベンチに向かって「これでいいか?」と指示を求めたのとほとんど同時に、江尻篤彦コーチがベンチを出てきた。「よし、それでいい」と確認作業はすぐにすみ、日本は最後まで守りきって、スコアレスドローで貴重な勝ち点1を手に入れた。

 ホーム&アウェーの戦いでは、ホームで勝ってアウェーで引き分けるのが鉄則だ。それができれば勝ち点は12となって、よほどのことがない限り首位を確保できる。日本は第3節までは鉄則どおりの戦い方ができていたのだが、窮地に追い込まれたのは、4試合目のアウェーのカタール戦の終盤に戦い方をめぐって混乱し、敗戦を招いたせいだった。

 カタールに追いつかれて1-1となったものの、そのまま引き分けるだけでも日本が優位に立てる状況に変わりはなかった。ところが、その時点で、もう1点取って勝ちに行くのか、そのまま勝ち点1を確保すべきなのか、攻撃陣と守備陣の間で意思の統一ができず、ベンチも有効な指示が送れなかった。

 だから、「引き分けでもいい」最終戦で同点のまま残り時間が少なくなってきたときに、彼らがうまく対処できるのか、あるいは再び混乱をきたしてしまうのかと僕は心配していたのだが、このときの本田とベンチの阿吽の呼吸を見て大いに安心した。

 カタールが、日本選手たちに貴重な教訓を与えてくれたということになる。

 最終戦の前のベトナム戦で攻撃が活性化したのも「カタール効果」だった。

 この試合で、日本はサイドからの攻撃によって4得点を奪って快勝した。右サイドは水野晃樹。ベトナム戦では日本は4-4-2だったから、サイドバックの内田篤人も水野を追い越すように攻め上がって何度もチャンスを作った。左はサイドバックが本職ではない伊野波雅彦だったため、右の内田のように攻撃に上がることはなかったが、本田圭がMFの柏木陽介や2トップと絡んで左からチャンスメーク。左で作ったチャンスに李忠成が完璧なタイミングで合わせて、前半のうちに2ゴールを奪って優位に立った。

 サイド攻撃は、もともとこのチームのストロングポイントだった。昨年秋に行われた日中韓3カ国対抗戦で、当時は「U-21日本代表」だったこのチームは中国に2連勝。韓国とも2引き分けという結果を残した。やはり4バックで戦った東京での韓国戦では、サイド攻撃が冴え渡った。

 これまで、日本ではアウトサイドは比較的手薄なポジションだった。しかし、このチームにはアウトサイドのMFに加えて、攻撃的なサイドバックもそろっている。したがって、4バックで戦えばMFとDFが絡んでサイドに数的優位を作ることで外にしっかり起点を作って、中央の動きを見極めながらクロスを入れることができる。

 '07年の幕開けとなったアメリカとの親善試合を前に、反町康治監督は「サイド攻撃はある程度できるようになっているので」、これからは中央の精度を上げるのだといった趣旨の、自信に満ちた発言をしている。

 しかし、U-22日本代表は2次予選、最終予選を通じて、FWの人選とシステムで悩み続けることになる。

(以下、Number693号へ)

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