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野茂英雄が「藤浪くんに伝えたいことがある」阪神・藤浪晋太郎、メジャーへの意識が変わった日…盟友アナウンサーが明かす「渡米前日譚」 

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堀尾大悟

堀尾大悟Daigo Horio

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photograph byHideki Sugiyama

posted2024/02/28 06:01

野茂英雄が「藤浪くんに伝えたいことがある」阪神・藤浪晋太郎、メジャーへの意識が変わった日…盟友アナウンサーが明かす「渡米前日譚」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

今季、ニューヨーク・メッツでMLB2シーズン目を迎える藤浪晋太郎。阪神で一軍に定着できていなかった彼がメジャー挑戦を決断するまでに何があったのか

こんなに考えているのに…

 一方で、「阪神タイガースの藤浪投手」を、服部はどう見ていたのだろうか。

「正直、2017年に最初に会ってからは、彼の活躍をほとんど見ていなくて……。仲よくなるにつれて、成績がどんどん悪くなっていくんです。本人が何を考えてプレーしているかはいろいろ話してくれるので、『こんなに考えているのに成績がダメになることってあるのか』と思いながら見ていました」

 大阪桐蔭高校で春夏連覇を成し遂げ、4球団競合の末にドラフト1位で阪神タイガースに入団、そしてルーキーイヤーから3年連続で2ケタ勝利を挙げていた藤浪を、誰もが「将来の阪神を背負う大エース」と信じて疑わなかった。

 ところが、知り合ってからというもの、長いトンネルの中にいた。制球が定まらず、マウンドに上がるたびに四死球を連発し続けた。

「これはただ事ではないな」服部が呼び出された夜

 服部には忘れられない日がある。2019年3月12日、ナゴヤドームで中日とのオープン戦に登板し4回をノーヒットで抑えた藤浪からLINEがあった。

「今日の夜、何されてます? 飲みませんか?」

「これはただ事ではないな」と悟った服部は、新幹線で帰阪した藤浪と落ち合う。時刻は深夜0時を回っていた。

 藤浪の自宅で、彼はぽつりと「二軍に行くことになりました」と打ち明けた。

「正確にいうと、二軍行きを自ら志願したそうです。『なんでなん?』と聞いたら、『バッターと勝負ができていない』と。強いボールを投げるには、ボールが抜けないようにするには……と、自分と向き合ってばかりいて、バッターとの駆け引きにまったくフォーカスできていない。この状態のまま上(一軍)で投げ続けても周りに失礼だ、と……。
 一軍で投げることがプロ野球選手の仕事だとすると、それを自ら放棄するということは、よほど追い込まれているんだろうな、とは思いましたね」

 一軍と二軍を行ったり来たりする盟友を、服部は複雑な思いで見守っていた。というのも、藤浪から秘めた「ある野望」を聞いていたのだ。

【次ページ】 レジェンド投手からの、思いがけない言葉

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