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“東大史上最速ランナー”秋吉拓真に思う箱根駅伝《学生連合チームの価値》…「専門は機械情報工学、在宅で採点バイト、飛躍の契機は帰宅ラン」 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byAtsushi Hashimoto

posted2024/02/16 11:02

“東大史上最速ランナー”秋吉拓真に思う箱根駅伝《学生連合チームの価値》…「専門は機械情報工学、在宅で採点バイト、飛躍の契機は帰宅ラン」<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto

昨年、長距離種目の東大記録を軒並み塗り替えた秋吉。来季以降の学生連合チームの有無は箱根出場の可能性に大きな影響を与える

 なぜなら、「文武両道」(使い古されたフレーズではあるが)を体現している秋吉の学生生活は、ひとつの「ロールモデル」になり得るからだ。東大の理系は2年生からいそがしくなる。しかし、秋吉はなんとか練習の時間をひねり出している。

「機械情報工学を勉強していますが、いまは基礎となる学課を座学で学ぶ時間が多いです。周りには、ものづくりやロボットを専門にする研究室も多くて、ロボット開発のコンテストにチャレンジしている学生もいます。

 僕も研究に取り組みたいという気持ちもあるにはありますが、今は陸上に対する熱量の方が多くて、走ることにリソースを割いている感じです。コンテストに参加する学生は、僕の陸上に対する熱量と同じような熱量で取り組んでいるのが分かるので、中途半端な気持ちではできないです」

本郷→三鷹台まで18kmの帰宅ジョグ!?

 本郷キャンパスでの授業が増え、生活時間にも変化が出てきた。

「いまは週4で本郷キャンパスでの授業があるので、日によっては本郷から三鷹台までジョグで帰ることもあります」

 本郷から三鷹台!

 東京在住者にとっては、びっくりの距離だ。なんと18kmあるという。その結果として月間走行距離が伸びている。

「高校時代の月間走行距離は100km程度だったのが、いまでは500kmくらいにはなっていると思います」

 アルバイトも、個別指導塾の講師を務めていたが、競技会が近づくと時間のやりくりが難しくなるので、現在はほとんど行けていないのだという。そこで自室で出来る採点のバイトを続けている。

 秋吉は、関東学生連合チームが編成されることを願いつつ、走り、機械情報工学を学んでいる。

 この春、秋吉は環境を変えようと考えている。

「3年生になると授業の方がいそがしくなってくるので、さすがに引っ越そうかと思ってます。荷物を背負いながら本郷から18kmも走ると、バランスを崩すリスクもありますしね。大学の近くに引っ越すことが出来たら、皇居の周りを走ったり、いろいろ工夫していこうと思っています」

 秋吉は吉報がもたらされると信じて、今日も走り続ける。文京区、千代田区、新宿区、杉並区を横断しながら。

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「箱根は走れなかったけど…」東大“史上最速ランナー”が昨年大躍進のナゼ…5000m13分台、1万m28分台も「高校では月100kmしか走ってなくて」

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