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日本代表“アジアカップで苦戦の理由”を中村憲剛がズバリ解説「心構えがW杯とは“真逆”になる」「アジア全体のレベルアップを強く感じます」 

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中村憲剛+戸塚啓

中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka

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posted2024/01/30 11:01

日本代表“アジアカップで苦戦の理由”を中村憲剛がズバリ解説「心構えがW杯とは“真逆”になる」「アジア全体のレベルアップを強く感じます」<Number Web> photograph by Getty Images

グループステージを2勝1敗の2位で通過した日本代表。前回のアジアカップを経験している選手はキャプテンの遠藤航をはじめ5人にとどまる

 イラクのロングボールを日本のCBがしっかり跳ね返し、ボランチが回収することができれば、前線の選手たちは自分たちのプレスが効いていると感じ、積極的に前からのプレスを継続できます。ところが、相手FWにロングボールを収められて自陣へ戻る回数が増えると、前線の選手は「行っても蹴られて、それを収められると長い距離を戻らなければならなくなる」という思考が強まり、前からのプレスを少しずつためらうようになります。

 また、ボランチの選手は、「前線に連動してプレスへいっても、ロングボールを収められたらプレスバックしないといけない」と考え始めます。その結果として、日本の生命線である3ラインをコンパクトにした守備がちょっとずつ間延びしてしまい、イラクの選手がプレーできる時間とスペースが生まれていきました。

 イラクは日本がやりたいことをやらせないところから入り、序盤から日本のストロングポイントである右サイドから攻撃することで、伊東や菅原を下げさせることを狙ってきました。そうした狙いを実現するための、「個」のクオリティも備えていました。

的確な陣形変更も「敵ながら見事なゲームプラン」

 追いかける展開はキツいものです。プロの選手が11人で本気で守ってきたら、こじ開けるのは簡単ではありません。これはもう、Jリーグでもヨーロッパの主要リーグでも、国際試合でも変わらないと思います。

 だからこそ、立ち上がりは慎重かつ大胆に入るべきなのですが、イラク戦は開始早々に先制されてしまいました。中東独特のアウェイの雰囲気のなかで、心身のコンディションがなかなか揃わず、大会の大本命チームとして各国の挑戦を受ける立場として、いつもどおりではない戦いに臨んでいる日本には、非常に苦しい展開となりました。

 イラク戦については、相手が5バックとの事前情報があり、スタメンを第1戦からかなり入れ替えていました。また、日本が後半途中の選手交代で攻撃の出力をあげると、すかさず5バックへ変更してきました。この時点でイラクは2点リードしていましたから、しっかり守備を固めてのカウンター狙いへ切り替えたのでしょう。彼らのゲームプランにはスキがなく、敵ながら見事なものでした。

 システムだけでも、戦術だけでも、メンタルだけでも、勝つことはできません。3つが高いレベルで揃わないと、公式戦で勝つのは難しいと改めて感じています。

<後編へ続く>

#2に続く
「南野拓実の左サイド」はなぜ機能しなかった? 中村憲剛が語り尽くすアジアカップの論点「キーマンは冨安健洋」「攻撃で重要なのは“幅”」

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