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箱根駅伝“山上りの5区”は実際どれほど過酷なのか? 元陸上部のお笑い芸人が20.8kmを歩いてみた「股関節がヤバい」「壁のような急坂が…」

posted2024/01/02 11:10

 
箱根駅伝“山上りの5区”は実際どれほど過酷なのか? 元陸上部のお笑い芸人が20.8kmを歩いてみた「股関節がヤバい」「壁のような急坂が…」<Number Web> photograph by Number Web

箱根駅伝5区の名所のひとつ・大平台のヘアピンカーブで。元長距離ランナーのお笑い芸人・松下慎平が「山上り区間」の踏破に挑んだ

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松下慎平

松下慎平Shimpei Matsushita

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箱根駅伝の名物「5区の山上り」。数々のドラマを生み出してきた高低差800m超の難コースは、実際どれほど過酷なのか? 2023年の「優駿エッセイ賞」でグランプリを受賞した気鋭の競馬ライター兼お笑い芸人の松下慎平(元陸上部)が、徒歩での5区山上りにチャレンジした。(全2回の1回目/後編へ) 
※取材は交通ルールに従って安全に注意しながら実施しました。

◆◆◆

 国道1号の最高地点、標高874mを目前にして、山から断続的に吹く強い風にすっかり弱々しくなった歩みが止まる。背中を丸め、舞い上がった砂が目に入らぬようにきつく目を瞑り、唸るような風の音を聞きながら閉じた瞼の裏で考える。

 私は何故こんなことをしているのだろうか?

 話は2週間前の一本の電話まで遡る。

「箱根駅伝の5区、実際に歩いてみませんか?」

「優駿エッセイ賞、グランプリおめでとうございます」

 2023年11月下旬。馴染みの編集者A氏(以下、A)から着信があった。通話を開始すると、挨拶もそこそこに祝福の言葉をくれた。

 競馬雑誌『優駿』が開催しているエッセイ賞で、応募4年目にしてグランプリの栄冠を掴むことができた。その発表日のことである。

 初めて同賞に応募し、最終選考に残った4年前の作品がきっかけで、私はAと仕事上の繋がりをもつことになる。そんな事情もあり、グランプリ受賞は2人の目標でもあったのだ。続けてAは言う。

「そんな松下さんに頼みたい記事がありまして……」

 なるほど。年の暮れには競馬界の大レース・有馬記念が行われる。その関連の依頼だろう。芸人兼競馬ライターとして大きく羽ばたいていこうとする私への一発目の仕事依頼だ。厚意に報いるためにも、必ずや誰もが感嘆するような有馬記念の記事を書き上げてみせる。腕をぶす私にAはこう告げた。

「年明けの箱根駅伝の記事なんですけど」

 あれ? 箱根駅伝ってお馬さん走りましたっけ?

 突拍子もない依頼に言葉を失った私に、Aは続ける。

「山上りで有名な箱根駅伝の5区を実際に歩いてみた、という体験レポートを提案したところ企画が通ってしまったので、その書き手を探していまして……」

【次ページ】 元長距離ランナーの威信をかけ、いざ“憧れの箱根”へ

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