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「梅野隆太郎第6戦ベンチ入り」のナゾを追う…阪神・岡田彰布監督が描いた“幻の秘策”とは?「スパイク、準備しといてくれよ」《日本シリーズ秘話》 

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/11/09 17:02

「梅野隆太郎第6戦ベンチ入り」のナゾを追う…阪神・岡田彰布監督が描いた“幻の秘策”とは?「スパイク、準備しといてくれよ」《日本シリーズ秘話》<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

第6戦から「まさかの」ベンチ入りとなった梅野隆太郎捕手。岡田彰布監督の狙いはどこにあったのだろうか?

岡田監督が「梅野ベンチ入り」を決めた理由は…?

 裏を返せば、異なる能力を持つ選手個々を大切に起用し、いかに長所を引き出すかに心を砕いている。岡田の用兵に対するスタンスである。機動力だけを考えれば、勝負強い走塁を見せる熊谷らの存在は貴重だ。

 だが、彼らを外してまで梅野を「戦力」と判断したのは、日本シリーズへの出場が来季以降の主戦捕手にとって有形無形の財産になるという考えもあるのだろう。

 余談だが、岡田は報道陣とのジャンケンでも、負けないための法則を考え抜くほどの負けず嫌いである。歴戦の勝負師が「情」だけにとらわれることはない。勝つために日々、最善の布陣を整える。

 梅野は偽りのない思いを吐露する。

「自分の野球人生において、これだけ長期離脱するのは初めて。ましてや、優勝する年にね。つらい思いがあったのは確かです。自ら起こしたケガじゃないし、死球で、何をどうしようもない状況でした。個人的には日本シリーズの40人枠に入れるとは思っていませんでした。だから、監督に感謝しかありません」

 梅野はオリックスとの戦いのさなかも、出番に備えて最善を尽くした。第3戦の試合前練習では、甲子園の外野で両翼ポール間を黙々と走り込んだ。メンバー入りが決まった第6戦以降は試合前練習中、入念に塁間で走塁練習をしていた。打撃練習の打球を見ては打球判断を繰り返し、感覚をチェックしていた。

 第6戦は出番がなかった。そして、第7戦も中盤に6点をリードし、終盤の8回を迎えていた。

 梅野は岡田から指示を受けた。

 先頭が出たら代走――。

【次ページ】 第5戦の練習時に梅野が才木にかけた「言葉」

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