「私も岡田監督に『三宅さん夜どんなんや？　ほんだらちょっと付きおうて』と言われて、店に行きました。2人は親子みたいに和気あいあいと喋っていましたよ。どっちも酒好きやし、話が尽きんのよ」

かつてオリックスなどを監督として率いた仰木彬氏　©Tabun Matsuzono

　翌日、仰木は横浜での試合を控えていたが、野球談義は深夜まで及んだ。自らが選手、コーチとして仕えた名将・三原脩の指導法や戦術を岡田に伝えていた。

「『こういうタイプには、違う教え方をしたほうがいい』『こんな作戦があったら面白いぞ』とか話していたなあ。岡田は飲んどってもね、よく覚えとんや。岡田は監督に最も必要な記憶力と誰もマネできない感性を持っている。いつも野球のことを考えていて熱心に研究しているから、いざという時の決断力があるんよ」

岡田がベンチでコーチに激怒

　スコアラーとしてベンチに入っていた三宅は、岡田監督の激怒を目撃している。

「試合中はぽつりとポイントを言うくらいで、ほとんど喋りませんね。でも、コーチがベンチで資料を読んでいると、『なんで今ごろ見とんや！　頭に入れてこい！』と怒っていた。努力を見せびらかすような仕草をものすごく嫌がった。『そんなもん、ええかっこしとるだけや。しっかり覚えてこなアカン』と言うてましたわ。そういう意味では、コーチもピリピリしてましたな」

岡田彰布が阪神を率いた第1次政権時代（2005年撮影）　©Hideki Sugiyama

　岡田は阪神の第1次政権では5年で4度のAクラス、1度の優勝と輝かしい成績を残した一方、2010年からのオリックス監督時代は3年連続Bクラスに沈んだ。それでも今年、阪神復帰1年目で優勝した。なぜ、この違いが生じたのか。野村克也のもとで経験した“過酷な二軍監督時代”にヒントがある――。

〈つづく〉