夫婦で価値観がズレることもあるけど……

ローラ　特に双子たちは使い分けが上手になってしまって、「パパの前なら何をしても怒られないもんね～」と思っているんですよね。教育上良くないのでやめてほしいと伝えたら、最近は少しずつ「だめだよ」って叱るようになりましたが、それでも夫婦で意見が食い違うことはありますね。

――たとえばどんなときに夫婦間で意見が割れるのでしょう？

ローラ　私は幼い頃から公共の場でのマナーを厳しく教わってきたので、子どもたちにも同じように注意しているのですが、逆に夫は「子どもはのびのび育つのが一番」という感性の人なので、その価値観のズレで衝突することはありますね。ただお互いに歩み寄ることで、私は子どもたちに多くを求めすぎず、彼はもう少し叱ってくれるようになっていい感じ……かと思いきや、また夫婦げんかをしてしまうのでそれが唯一難しいところです（笑）。まだまだ子育て方針は探っている途中ですね。

――そんななかでも、夫婦で共通している“子育ての価値観”のようなものはありますか？

ローラ　小さい頃から世界を見てほしいという思いは共通しています。やっぱり彼のラグビー人生についていって、世界を回れるというのはすごく恵まれた環境だと思っていて。いまは家族みんなでフランスに来ていますが、日本とは違う国の生活を知ったり、現地の文化やアートを見せたりすることで、それぞれ好きなものや興味のあるものに出会ってほしい。自分の就きたい仕事や住みたい場所の幅が広がってほしいという思いは一致していますね。

©本人提供

「なんでお引越しばっかりするの？」息子に聞かれた日

――ラグビー選手としてのキャリアを武器に世界を飛び回る章仁選手の姿は、お子さんたちにとってよい見本なのではないでしょうか。

ローラ　でもフランスに行く少し前に、長男が「やっぱり行きたくない」って言い始めたんですよね。ようやく小学校でお友達もできて、日本の環境にも慣れ始めていたので「なんでうちはお引越しばっかりするの？」って聞かれて。

――息子さんからそう言われたとき、おふたりはどのように答えたのでしょう？

ローラ　夫が言っていたのは「パパは色んなところに引っ越して仕事をしてきたから、世界中どこに行ってもお友達がいるんだよ」と。「一つの場所のお友達も大切だけれど、世界に飛び出せばもっとたくさんのお友達ができるからそのほうが楽しくない？」と話したら、息子も「うん、そうだね」ってあっさり納得してくれて（笑）。小学校の友達とは帰ってきたらまた遊べるから、フランスにいる間は楽しく過ごそうねという話に落ち着きました。

　確かに山田自身、世界中どこに行っても誰かしらとお茶をしているんですよね。人脈の広さがすごいなって思いますし、子どもたちにもそんな父の姿を見てほしいなと思っています。

〈ローラさん、章仁さんは現在、W杯のために4人の子どもを連れてフランスに滞在中。つづく第4回では、現地の食事、トイレ事情や現地サポーターの様子などを語ってもらった〉