「これだけの選手なのにメディアの取材なんて今日の1件だけなんですよ」と感謝されてしまって驚いた。

　実はこちらも、「隠し玉」という扱い方で取材をお願いしていたのだが……。

2018年の阪神は「外野手」「遊撃手」の獲得がマスト

　2018年のタイガースは、セ・リーグ最下位に終わっていた。

　特に福留孝介外野手、糸井嘉男外野手、鳥谷敬内野手の打線主力がいずれも40歳前後になり、その後継に頼もしい若手も見当たらず。外野手と遊撃手の後継獲得は、まさに「マスト」となっていた。

　この年のドラフトは、出足から会場がどよめいた。

　1位指名の頭から3球団、楽天、阪神、ロッテが続けて、大阪桐蔭高・藤原恭大外野手を指名したから驚いた（抽選でロッテが獲得）。

ドラフトの目玉になりにくい「外野手」で珍しく競合が起きた2016年。阪神は「外れ外れ1位」で近本を獲得　©︎JIJI PRESS

　さらに繰り上げ1位指名で再び、楽天と阪神が立命館大・辰己涼介外野手で重なったから、もっと驚いた。

　これまでのドラフトで、「投手」が繰り上げ1位で重複することはあったが、ドラフト的にはたいてい後回しにされる外野手（失礼！）が二度も重複するなんて、こちらの想定にもなかった。

　そして外野手2人を獲り逃がした阪神が「3人目の外野手」として指名した大阪ガス・近本光司が2018年ドラフトの「阪神1位」となったのだ。

　藤原恭大181cm、76kg、辰己涼介180cm、74kg。快足・好打・強肩の上に、ふたりには「サイズ」があった。1位指名が外野手でも、それがファンに対する説得力になった。

　一方で、近本光司171cm、67kg。「こんなに小さいのが1位で大丈夫なのか？」……そのへんが、共通したファン心理だったろう。

「スカウトの仕事って、いい選手を探すことだけじゃない。それじゃまだ半分なんです。探したら獲ってこないと。現場のリクエストに合った選手を獲得して初めて、仕事をしたことになるんです」

　あるベテランスカウトの方が、以前力を込めてこんな話をしてくれたことがある。

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