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「とにかく悩まずに自然体でいたい」小野伸二が語る《ファッション》《家族》そして《引退》【天才MFのブレない生き方】

posted2023/09/26 17:00

 
「とにかく悩まずに自然体でいたい」小野伸二が語る《ファッション》《家族》そして《引退》【天才MFのブレない生き方】<Number Web> photograph by Tomosuke Imai

NumberとASICSが共作したジャケットを着る小野伸二

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涌井健策(Number編集部)

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui

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Tomosuke Imai

 NumberとASICSで共同プロジェクトを立ち上げ、企画・開発したアパレル<tokyo_edit>がリリースされた。日常でも、スポーツウェアでもアウトドアシーンでも身につけられる、快適さや着心地にこだわったセットアップだ。
 それを着用するモデルとして声をかけたうちの1人が、サッカー選手・小野伸二。43歳の天才MFはコンサドーレ札幌で現役としてプレーし、解説などでもサッカーの楽しさを伝えている。その軽やかでブレない姿が、NumberとASICSが思い描く「自由な生き方」と重なった。

 これまで「Number」では、18歳のデビュー以来、小野伸二のアスリートとしての側面を掘り下げてきた。だが今回、「ファッション」「東京という街」「人生観」など、サッカーから離れたテーマでインタビューすると、その言葉からは一貫した独自のスタイルが浮かんできた。

「この2、3年で東京で電車に乗るようになったんですよ。高校卒業して浦和に入ってからは、ずっと車での移動が多かったから、これまで地下鉄には乗ったことがなかった。娘と一緒に出かけるようになって、初めて大江戸線に乗ったら『深っ!』って(笑)。皆さんには当たり前かもしれないけど、マジでびっくりしました。小田急の豪徳寺で乗り換えた時には、なぜか駅名が山下に変わったのにも驚いて、思わず動画撮ったりもしましたね」

 小野が、楽しそうに笑う。

 2人の娘に誘われて竹下通りを初めて歩けば人の多さに驚き、宮下パークのホテルに泊まって東京の変化に関心したりもした。プロ26年目のサッカー界のレジェンドとしてではなく、1人の父親として自然体で言葉が出てくる。

「若い時は、周りや他人にどう見られるかを気にしていたのですが、年齢を重ねて、もう自分がどう思われても気にしなくなりましたから、街も普通に歩くし、電車にも乗ります」

クラブは変わっても家族が待つのはTOKYO

 現在、シーズン中は札幌でひとり暮らし。これまでのプロ生活で、オランダ、ドイツ、オーストラリア、静岡、沖縄と在籍するクラブが変われば、暮らす場所も変わってきたが、家族の待つ自宅は常に東京にあった。

「だから、東京に帰ってくると癒される、というか。家族がいて、犬もいて。いつも1人なんで、東京で過ごす時間は、とても大切な時間です。もちろん1人の時間が多いからそう思っているだけかもしれません。これがずっと一緒にいたらどうなるか、と(笑)。妻や娘もそう思っていると思います。まぁ、でも1週間とか家族旅行に出かけても楽しいので、大丈夫なはずですけど」

 浦和レッズに在籍していた若いころと比べて、その東京という都市の印象は変わったか、と問うと「基本的には変わらない」という。

「東京って一言で行っても、場所によって全然雰囲気が違うじゃないですか。銀座、渋谷、六本木、三軒茶屋。それぞれの土地に色があって、土地の持っているエネルギーの種類が違う。その印象は変わりませんね」

 特に思い出に残っている場所は、表参道だという。

「プロに入って今の奥さん(モデルの千恵子さん)と出会った時は、彼女の当時の事務所が表参道にあったので、よく車で迎えに行きました。カフェやブランドのショップが連なっていて、その華やかで、煌びやかな景色はよく覚えています。ああ、東京だなって」

 撮影の間にも、ふと漏れてくる言葉の端々から家族の雰囲気の良さが伝わってきたが、Number1068号で小野伸二を特集をした際、長女・夏蓮さんと次女・里桜さんは、父親をこんな風に評してくれた。

【次ページ】 「マジで小野伸二みたいな人と結婚したい」

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