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「とにかく悩まずに自然体でいたい」小野伸二が語る《ファッション》《家族》そして《引退》【天才MFのブレない生き方】 

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涌井健策(Number編集部)

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui

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photograph byTomosuke Imai

posted2023/09/26 17:00

「とにかく悩まずに自然体でいたい」小野伸二が語る《ファッション》《家族》そして《引退》【天才MFのブレない生き方】<Number Web> photograph by Tomosuke Imai

NumberとASICSが共作したジャケットを着る小野伸二

<夏蓮「明るくて面白くて、本当にかっこいいんですよ。努力している姿も、常に他人に気を配れるところもかっこいい。娘に荷物を持たせないし、私たちが車から降りる時には先に降りてドアを開けてくれるんです。そういう気遣いを、分け隔てなく誰にでもしてくれる」

里桜「家族旅行でハワイに行ったとき、パパがプールサイドに落ちてるゴミを拾ってたんですよ。それを見て本当に優しい人だなって。いつ見ても良い所しかない。それで最近、マジで小野伸二みたいな人と結婚したいなと思い始めたんです(笑)」>([娘が語る父の素顔]「小野伸二しか勝たん!」より)

キャップやパーカーは50以上持っている

 テレビで解説するときなどはスーツを着こなしている印象があるが、ファッションへのこだわりはあるのか。日本代表でともに戦った中田英寿などは、ハイブランドのアイテムを自分なりに着こなして空港などに登場して話題になっていた。

「自分は着飾るということは考えなくて、基本的にシンプルなものが多い。だって、マラドーナはファッションのこととか考えてないじゃないですか?(笑) 僕も夏はTシャツに短パンだし、冬はパーカーにデニム。それにキャップを組み合わせるだけです。とにかく着るもので悩みたくないんです」

 そうは言うものの、話を聞いていくと「シンプル」の中にもこだわりが垣間見える。シューズはどんな服にも合わせやすい白が中心で、キャップは2007年頃に出会って深さがしっくりきたブランドを愛用し、パーカーはジップアップが苦手で全てプルオーバー。キャップやパーカーは50以上持っているという。

「買い物をするときも、パッと見た時に自分のフィーリングとあえば買うし、合わなければ手に取らない。ブランドにも興味はないし……着替える時もそうですけど、とにかく悩まずに自然体でいたいんです。複雑にすると、よくわからなくなるじゃやないですか」

「小学生の頃から成長していないだけかもしれません」

 今回、企画・開発した<tokyo_edit>の上下セットアップを身につけての撮影でも、とにかく自然体だ。カメラを意識しすぎることなく、歩き、手を動かし、話をしてくれる。

「このジャケットとパンツ、シンプルでいいですよね。暑い中でもベタベタせずに、さらっとしている。それに、とにかく軽くて、着心地がいいから、椅子に座ってのデスクワークが多い人も楽だと思います。スポーツウェアという印象にとらわれずに、一度着てみて欲しいですね」

 そのプレーで多くのファンを魅了し、多くの人々の憧れであるのに、どうしてそこまで自然体でいられるのか。ヒントは考え方にありそうだ。

「悩みはありますか、と質問されることがあるんですが、ないんです。強いて言えば、そう聞かれて答えられないことが悩み、というか(笑)。若い頃から考え方があっさりしていて、『やるか、やらないか』だし、やってみて『成功するか、失敗するか』だな、と。複雑に考えないようにしています。小学生の頃から成長していないだけかもしれませんが」

 凡人は、将来に思いを馳せると、複数の選択肢の間で心が揺れたり、不安になったりする。だが日本サッカーが生んだ天才MFはそうではないらしい。

【次ページ】 「引退しても自分は生きていけると思う」

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