「このドイツが相手だったら、日本は勝てたかな？」

　そんなことを考えながら、急ぎゲンクからドルトムントへと移動し、現地時間21時キックオフのドイツ対フランスを撮影した。

　ドイツ最大のスタジアム、ジグナル・イドゥナ・パルクで、筆者は伝統的な強豪国の意地を目にすることになった。日本戦の惨敗を受けてハンジ・フリック監督を解任したドイツが、カタールW杯準優勝のフランスに2－1で勝利したのだ。

ハンジ・フリック監督を解任したドイツは、フランスに2－1で勝利して意地を見せた　©Masashi Hara

　トーマス・ミュラーの先制ゴールが国民の気持ちを一気に引き戻すと、チームは日本戦のように様子を窺うのではなく、球際の激しさと素早い展開でフランスを押し込み続けた。

　キリアン・エムバペが不在というタイミングの良さも味方したが、サポーターの信頼を取り戻すための瀬戸際の戦いで、ドイツは雲の彼方に飛んで行こうとしていた“ドイツらしい強さ”という風船の紐を、かろうじて掴むことに成功した。

「このドイツが相手だったら、日本は勝てたかな？」

　試合後、メディアラウンジで振る舞われたビールを飲みながら、ふとそんな話になった。

「いや、勝てるんじゃないですか？　僕らが思っているよりも日本は強くなってますよ」

　安堵の表情を浮かべてバーカウンターで談笑しているドイツメディアの記者たちをちらりと見つつ、心からそう思った。ドイツ戦の勝利は決して“奇跡”ではなかったが、だからこそ奇跡以上に価値のある大きな成果だったのだ。

＜前編から続く＞