投手陣を牽引するキャッチャーの尾形樹人は、マスク越しから見た浦和学院打線の印象をこのように話していた。

「相手バッターの対応がひとつじゃないな、と。リードしていて、抑えたと思っても2段階、3段階と対応が変わってきているなって感じはしていました」

超強力投手陣相手にタクトを振るうキャッチャーの尾形樹人　©Kichi Matsumoto

　尾形の分析は的を射ていた。浦和学院の森大監督は「湯田君も高橋君も少し変化球が高かったり、本調子じゃなかったんでしょう」と相手を尊重しながらも、チームとしての対策の一端を明かしてくれた。

「とにかくストレートを狙う。そこから変化球にどう対応していくかということで、ファーストストライクを積極的に狙わせたり、追い込まれてからの対応をどうしていくか、ということは常に考えていました」

　そして森も、試合を振り返るなかで須江と同じように語調を強めて言った。

「これが、甲子園ですよ」

　両チームの予定調和をも上回る、強豪同士による超乱打戦から見えたもの。

　それは、甲子園は“0.00001％”が起こりえる場所だということだ。

前回大会優勝後の須江監督の「青春って、すごく密なので」という言葉は流行語にもなった　©Hideki Sugiyama

甲子園は「甘い世界ではない」

　昨夏の全国制覇から、須江は何度も訴えてきたことがある。

「今回は勝たせていただきましたけど、だからといって次も勝てるなんて、勝負事はそんな甘い世界じゃありません」

　150キロのピッチャーを複数揃え、優勝候補だと太鼓判を押される仙台育英だからこそ、初戦を通じて伝えた「絶対はない」というメッセージに、説得力があった。

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