マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER

あの慶應高vs横浜高「踏んだ、踏まない」誤審疑惑…現役審判員が証言する“意外なポイント”「映像が100%正しいわけじゃないんです」

posted2023/08/04 17:00

 
あの慶應高vs横浜高「踏んだ、踏まない」誤審疑惑…現役審判員が証言する“意外なポイント”「映像が100%正しいわけじゃないんです」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

神奈川大会決勝で慶應高に敗れ涙を流す横浜高校の選手たち

text by

安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

PROFILE

photograph by

JIJI PRESS

 Kさんは、ある県の現役高校野球審判員である。本業のかたわら、主に休日を使って審判員としてジャッジをふるう。

 Kさんは「今年ほど“思うところ”の多い夏はこれまでなかった」という。

 最も本質に近い現象に触れているのは、いつも「現場に立つ人たち」である。たった数日前まで地方大会の熾烈な「現場」に立ち合ってきたばかりの現役審判員の「本音」とは一体どんなものなのだろうか?

ネットを騒がせた慶應高vs横浜高「踏んだ、踏まない」騒動

「神奈川大会の決勝戦(慶應高―横浜高)の件で『ネットであれだけ叩かれたら、高校野球の審判のなり手がいなくなるんじゃないか』って報道がありましたけど……」

 Kさんは、そんな風に話しはじめた。

「神奈川大会の決勝戦の件」とは、5-3の横浜高校リードで迎えた9回表慶應高校無死一塁でのシーンのことだ。慶應高の選手の打った打球は二塁正面に飛び、注文通りの併殺かと思われた。

 しかし横浜高のショートの選手が二塁ベースを踏まないまま一塁へ送球したとして、オールセーフと審判が判断。判定に疑問を感じた横浜高側は審判に説明を求めたものの、判定は覆らなかった。その直後、逆転の3ランで結果的に横浜高は試合に敗れることとなった。

 直接的に勝敗を分けることに繋がったようにも見えるシーンだけに、試合後はネット中心に「誤審では?」という声が噴出。ビデオ判定の導入まで含めて、賛否両論の大激論となったのだ。

「でも、ネットで非難されて『審判やめます』っていう話、私は聞いたことないんです。そもそも審判なんて、アウトかセーフか、ストライクかボールか、◯か×かを、見ている人たちに代わって判定する立場です。批判も含めて周りからああだこうだと言われるのは、結構、承知の上でやってるんですよ。

 しかももう何年もSNS隆盛の時代が続いてますから、陰からいろいろ言われるのは当たり前だと思っていますし、そういう声は気にしないように指導や教育もされています。仮に辞める人間がいたとしても、それで組織がバタバタするほど審判員の数も少なくありませんしね」

【次ページ】 ビデオ判定も…「映像が100%正しいわけじゃない」

1 2 3 4 NEXT
慶應義塾高校
横浜高校

高校野球の前後の記事

ページトップ