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堂安律20歳が“4カ月ノーゴール”に苦悩した日々「香川真司くんのような長くトップレベルの選手は違った」「甘いコースにしか…」 

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堂安律

堂安律Ritsu Doan

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2023/04/23 11:02

堂安律20歳が“4カ月ノーゴール”に苦悩した日々「香川真司くんのような長くトップレベルの選手は違った」「甘いコースにしか…」<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

2018年夏、20歳の堂安律。欧州1年目の17-18シーズンは9ゴールを挙げるなど順調な船出だったが、続く2年目に苦しみを味わった

 調子はむしろ、ずっとよかった。監督を含めて、得点以外のプレーを評価してくれる人もいた。でも攻撃の起点になってチームの勝利に貢献したからいいとは、まったく思わない。逆に調子が最悪でも、とにかく点をとったらOK。結果がすべて。海外に行ってから、そういう考え方に変わった。

 日本にいるときはアシストにも美学を感じていたけど、まったく魅力を感じなくなっていた。どんなにいいプレーをしていても、ラスト10分で代えられて、途中から出た選手が後半ロスタイムにゴールを決めたら、そいつが次の試合に出る。そういう世界でやっていたら、内容がよかったなんて言っていられない。海外に行って現実を思い知らされた。俺が目指しているのは、ピッチにいる22人のなかでいちばん輝いている選手だから。

得点を意識するあまり、丁寧に蹴ろうと

 やっぱりゴールがいちばん評価されるし、単純にいちばん目立つ。「アタッカーとして生き残るためにはゴールしかない。それで周りを黙らせるしかないんだ」という意識が強かった。アジア杯で結果を出せなかったことで、そこからはゴールを決めたいという野心ばかりが大きくなりすぎてしまった。「もっと貪欲に点をとらないと」という気持ちが強すぎて、数的有利な状況でも、フリーの味方にパスを出さない場面が何度もあった。ゴールに取り憑かれて頭でっかちになり、心と体のバランスが崩れていた。

 空回りした気合はプレーにあらわれる。シュートを打つときに肩に力が入ってしまい、ボールをインパクトし切れない。GKと1対1になってもゴールの隅を狙えず、置きにいって甘いコースにしか蹴けることができない。得点を意識するあまり、丁寧に蹴ろうと無意識に体が反応してしまい、消極的になってしまっていたんだと思う。

 海外に行ったばかりのころはもっと気楽に構えて、「チームのためにがんばろう」という意識が強くあった。ゴールに対する執着心はあっていいと思うけど、それに固執しすぎると自滅してしまうのだ。

やっぱり楽して決めようとしても、結局、ダメ

 フローニンゲン2年目のシーズン終盤はもう開き直っていた。「どれだけチームメイトがミスしてもポジティブに鼓舞して、俺が引っ張ってやろう」という意識でがむしゃらにプレーした。

 その成果が出たのが、2019年5月12日の第33節フォルトゥナ・シッタート戦での会心のミドルシュートだった。打った瞬間に、「おっ!」と思ったのは初めてかもしれない。パンチ力、一発の振りは誰にも負けない自信がもともとあったけど、「サッカー選手としての俺の強みはやっぱりこれなんだ」とあらためて感じさせてくれるゴールだった。

【次ページ】 そこを突きつめなければ欧州で生き残れない

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