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『THE FIRST SLAM DUNK』はなぜマンガ版を知らない世代にも「刺さる」のか? “原作未読組”を直撃「メガネ君が気になりました」

posted2023/03/29 17:29

 
『THE FIRST SLAM DUNK』はなぜマンガ版を知らない世代にも「刺さる」のか? “原作未読組”を直撃「メガネ君が気になりました」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

韓国の映画館に設置された湘北高校の選手たちのパネル。『THE FIRST SLAM DUNK』は日本だけでなく海外でも大ヒットを記録している

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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JIJI PRESS

異例のロングヒットが続く『THE FIRST SLAM DUNK』。原作者の井上雄彦氏自身が監督を務めた同映画は、漫画を知らない若い世代にも口コミで評判が広がり、興行収入は124億円を突破した。『SLAM DUNK』をこよなく愛し、「映画を10回見た」というライターのいしかわごう氏が、“原作未読組”の証言も交えながら、その魅力を深掘りしていく。
※映画本編および原作のネタバレを含みますので、未見の方はご注意ください。

◆◆◆

 困ってしまった。

「映画『THE FIRST SLAM DUNK』についてコラムを書かせてくれ!」と溢れんばかりの、いや、ちょっとこぼれているぐらいの、特盛汁だくの『SLAM DUNK』愛をNumber Web編集部にぶつけたら、なんとOKが出てしまったのだ。

 困る必要などないじゃないかと思われるかもしれないが、なにせこちらは筋金入りの直撃世代である。『週刊少年ジャンプ』連載中から熱心に読み続け、連載開始号と最終回の号はいまだに保管している。当時のファンレターの返事(作者描き下ろしのイラストだった)も大切に所有し、完結後に開催された幻のイベント「あれから10日後―」にも足を運んだ“ガチファン”だ。映画は現在までに10回ほど鑑賞した。桜木花道の背番号と同じ回数だが、このペースだと三井寿の背番号(14)ぐらいになるだろう。思い入れが強すぎる作品ゆえ、いざ原稿を書こうとしても書きたいことがまとまらず、冷静さもまるで保てないではないか。それで困ってしまったというわけである。

スポーツノンフィクションとしての「湘北対山王」

 溢れる感情を抑えながら書いていくが、『THE FIRST SLAM DUNK』はオープニングから衝撃的だった。

 真っ白な空間に、今作の主人公である宮城リョータが鉛筆のタッチで描かれていく、あのイントロダクションだ。The Birthdayの『LOVE ROCKETS』のベースが響き始めると、湘北高校の選手たちがひとりずつ現れ、こちらに向かってゆっくりと歩き出してくるのである。原作者である井上雄彦監督が揺るぎないこだわりで取り組んだという、この演出。連載終了から26年の時を経て、まるで命が吹き込まれたように動き始める「あいつら」に、心が震えたのは自分だけではあるまい。

 そして対戦相手となる山王工業の面々が王者の風格で階段から降りてきて、両チームが向かい合うと、一斉にコートに走り出して試合開始。そこから圧巻のクオリティで描かれ続けるゲームの臨場感と、キャラクターのリアルな動きに、ただただ打ちのめされ……。ダメだ、やはり落ち着いて語れそうにはない。

 冷静になるためにも、切り口を少し変えてみよう。

 湘北対山王といえば、スポーツ漫画史上に残る名勝負である。そうした名勝負の裏には、必ず当事者たちの知られざるドラマが隠れている。

【次ページ】 なぜ原作を知らない若い世代にもウケているのか

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