欧州サッカーPRESSBACK NUMBER

「スペインを破ったのだから、日本はもう強豪だよ」闘将プジョルが日本サッカーに金言「“遊び”と“競争”があればもっと伸びる」 

text by

栗田シメイ

栗田シメイShimei Kurita

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2023/02/16 17:03

「スペインを破ったのだから、日本はもう強豪だよ」闘将プジョルが日本サッカーに金言「“遊び”と“競争”があればもっと伸びる」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

「バルセロナの魂」とも呼ばれたカルレス・プジョル。1月上旬に来日した際に、自身のルーツについて語ってくれた

 プジョルの話の中で意外だったのは、繊細なディフェンダーとしての感性と、緻密な理論だった。

 時に荒々しさを感じさせプレーからは、失礼ながら直感的なプレーヤーという印象も抱いていたが、内実は全く異なる。いかなる時も対戦相手の分析を怠らず、相対するアタッカーの細かいデータにまで目を通し、プレーを先読みし予測に繋げた。ある意味では、そういった下準備がなければ成功はないことを、厳しい競争の中で感じとっていたともいえる。

「100%で試合に臨むには、ディフェンダーの場合、相手を知ることが欠かせない。相手のFWはどこに強みと弱みがあり、どんな癖や傾向があるのか。その中で自分はどんなポジションを取り、DFラインをまとめるのか。攻撃的なチームの中で、常にインターセプトを狙う私のスタイルには、客観的なデータに基づく予測は必要不可欠だった。相対する相手FWの大半は、自分より背が高く、スピードもある選手。トップレベルの場合は、常にそうだった。そんな相手を抑えるにはデータをみて、映像もチェックし、経験から予測に繋げるということの繰り返し。それは引退まで変わらぬ私のルーティンだったが、そういった分析や下調べをすることは、すごく好きな時間でもあったよ」

 彼の言葉からは、才能やフィジカル面に恵まれた選手だったという意識は微塵も伝わってこない。DFとしては決して大きくない体ながら、空中戦でも無類の強さを誇った。そこにもプジョルの強いこだわりがあった。

「へディングの重要性は、W杯でも多くの得点がセットプレーから生まれたことからも明らかだろう。空中戦で大切なことは、まずは出来るだけ相手をゴールから遠い位置に“追い出す”ことだ。その中で常に相手に触れられる位置に自分がいること。当然常に勝てるわけではないから、負けた時にどうするか、ということを常に考えていた。自分が競っている時に、どこにスペースがあり、危険なスペースが生まれる可能性があるのか。それを予測して、味方に伝えながらプレーすることは決して簡単ではない。それでも、私はそれをずっと続けてきたんだ。なぜなら個人よりもチームで守ることがDFにとって最も大切だからだよ」

ボール奪取率で欧州No.1「誇らしい記録」

 数多の個人タイトルを勝ち取った中でも、最も誇りにしているのは、インターセプトの多さだという。事実、09-10シーズンのボール奪取率で欧州ナンバーワンの数字を残したことは、プジョルの選手としてのパーソナリティを語る上でも大きな意味を持つ。

「バルセロナやレアル・マドリーのような支配的なチームは、その攻撃的なスタイルゆえにカウンターを受ければ失点に直結する。ボールを失った瞬間に、いかに相手の攻撃の芽をつむか、ということは常に念頭に置く必要があった。だから、ボール奪取率1位という数字は、チームへの貢献を考えても誇らしい記録だったね。ラインが高いチームにおいてボールを奪うということは、ポジショニング、予測、コーチング、戦術理解、全てが備わっていないと、難しい。そのため、ディフェンダーとして最も名誉ある賞だとも私は考えているんだ」

【次ページ】 「メッシのW杯優勝は感慨深かった」

BACK 1 2 3 4 NEXT
カルレス・プジョル
バルセロナ
リオネル・メッシ
アンドレス・イニエスタ
シャビ
ロナウジーニョ
ルイス・ファンハール
ルイス・フィーゴ
乾貴士

海外サッカーの前後の記事

ページトップ