オレ、それは信じてるし

――繰り返しになるけど、そういう感覚を共有するのは簡単じゃないかもしれない。

「いやでも、みんな感じていると思う。オレ、それは信じてるし。やるからには優勝したいと思ってるはず。それを発言しないだけで、絶対に優勝したいって心の中で思ってるよ。ただ、まだみんなは半信半疑なところがあるとは思う。口に出して言ったら、プレッシャーもかかるやろうし。でも、そのプレッシャーはオレが背負うよ。オレは言い続けるし、そこはもう絶対に揺るぎないところやから」

©︎Takuya Sugiyama

――みんなの分のプレッシャーまでも背負うつもりとは……。

「オレはメンバーには信じてもらわんと困るし、その作業はやる。オレはみんながこの2戦で、気づいたと思ってる」

――そうであってほしいね。

「ただし、気づいただけじゃアカンし、イメージしないとアカン。繰り返しね。そこに到達するための逆算方程式で、何をしなきゃいけないかのトレーニングをプランニングして、それを実践する行動力が必要になってくる。そして、そのための行動が何よりも難しい作業になる。すべてのものを犠牲にして、すべての時間を犠牲にしてトレーニングに費やすことができるのか。食べたいものを我慢して、食べないといけないものを食べる勇気があるのかとか。ホント細かいこと。遊びたいのを我慢して、睡眠の時間に費やす。次のトレーニングに費やす。当たり前のことだけど、これは真面目でもなんでもなくて。別に自分のことを真面目やと思ったことはないし。あくまで勝利への執念というか。自分の目標のためには当たり前のこと」

――その先にW杯優勝がある？

「いや、別にW杯優勝がすべてじゃないけど、オレは自分が言ったことに責任を持っているし、言った以上は絶対にそれを成し遂げようと思ってるから」

©︎Takuya Sugiyama

　2010年W杯前、当時はグループリーグ突破すらも厳しいと言われているにもかかわらず、本田は「W杯優勝」を目標に掲げていた。それから約2年が経ち、まだ半信半疑とはいえ、もしかしたら優勝を目指してもいいのかもしれない、というムードが日本に生まれつつある。本田が自らの行動によって、世界の頂点との距離を着実に縮めているからだ。

　本田の体内では、想像を絶した覚悟とともに、ブラジルW杯へのカウントダウンが始まっている。

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