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「クレイジージョブ? 代表監督は幸せな仕事」森保一が語った“続投”決定前の本音「批判は気にならないし、逃げ出したいと思ったこともない」

posted2023/01/01 14:40

 
「クレイジージョブ? 代表監督は幸せな仕事」森保一が語った“続投”決定前の本音「批判は気にならないし、逃げ出したいと思ったこともない」<Number Web> photograph by Walnix

カタールから帰国後、インタビューに応じた森保一監督。東京五輪監督就任を含めた約5年の戦いを振り返った

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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Walnix

先日、2026年W杯までの“続投”を発表したサッカー日本代表・森保一監督(54歳)。東京五輪代表チームの立ち上げから5年、その戦いぶりを現地取材してきたスポーツライター飯尾篤史氏が、多くの批判を受けながらも信念を貫いてきた勝負師の本音に迫った(全3回の1回目/#2#3へ)※インタビューは2022年12月28日の続投会見の前に行ったものです。

――先日、ある日本人監督の方がこんなことを話していました。「日本代表監督になるのが目標だったけど、自分には無理だな」と。「あれだけ批判され、重圧が掛かって、一筋縄ではいかない選手たちを束ねたうえで、あの舞台で結果を引き寄せるなんて、自分にはできそうもない」と。

森保一(以下、森保/敬称略) でも、責任という意味ではクラブの監督も代表チームの監督も変わらないと思いますよ。クラブの監督だって、もちろん批判に晒されますし。

――でも、注目度や批判の量は全然違いますよね。

森保 違うんですかね……まあ、違いますね(笑)。でも批判も含めて、それだけサッカーに目を向けてもらえているということなので嬉しいですし、ファン層が広がればいいなと思っていて。もちろん、肯定的な意見を言ってもらいたいですけど(笑)、そこは見る人のサッカー観や価値観なので自由かなと。

 ネット上には批判がたくさんあるかもしれませんが、それがすべてじゃない。肯定的な意見って、あまり出てこないですから。だから、まずは自分の周りのスタッフを信じ、日本サッカーのために一緒に戦ってくれる人たちの輪を信じていく。そこに目を向ければ、仲間がたくさんいるので批判は気になりませんでしたね。批判が気になる人は大変なんだろうな、と思いますけど、私はストレスを感じることなく仕事をさせてもらいました。代表監督は「クレイジージョブ」と言われますけど、私にとってはクレイジーではなく、幸せな仕事ですね。

唯一の“後悔”は、あのオマーン戦

――森保さんは「一喜一憂しないこと」がポリシーで、この4年半も感情の波が大きく揺れることはありませんでしたが、外に見せなかっただけで、心の中で「逃げ出したい」と思うことはなかったんですか?

森保 それはなかったですね。いつも落ち着いていますよ。日本代表が少しでも成長し、勝利することを考えて、自分のできることをやる。結果に関しては、神のみぞ知るではないですけど、ベストを尽くしたら、どんな結果になろうと受け入れようと。だから、後悔もないですし……ただ、唯一あったのがオマーン戦ですね。

――2021年9月に行われた、カタールW杯アジア最終予選の初戦ですね。

森保 あのときは初めて練習のクオリティが上がらなかったんです。オリンピックが終わったばかりで疲労の残る選手もいれば、「ワンチーム・ツーカテゴリー」ということでやってきましたけど、オリンピック組とA代表組で意思疎通を図れないところが少しあったり。欧州のプレシーズンに自チームの戦術を頭に叩き込んだばかりで、代表チームのやり方を忘れていたり、欧州の移籍市場が閉まる直前で、ホテルで代理人とずっと電話している選手がいたり……と、いろいろな要因があった。大丈夫かな、という気持ちで臨んだところがあって。

――そうしたら、案の定敗れてしまった。

森保 そのあとは、もちろん勝ったり負けたりしましたが、準備段階ではたとえ2日しかなくても最善の準備をしたので、結果はすべて受け入れるという心境になっていましたね。

――(ハリルホジッチ監督時代の)16年9月に行われたロシアW杯のアジア最終予選でも初戦を落としていますから、9月上旬の試合は本当に難しいんでしょうね。それは教訓にしていかなければならないですね。

森保 本当にそうだと思います。20年の9月はコロナ禍で代表活動ができなかったので、自分のなかでも難しさの記憶が飛んでいて。すごく反省しました。

【次ページ】 クロアチア戦翌日の朝に思った“PK戦”のこと

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