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“甲府20年目で初タイトル”山本英臣に聞く天皇杯決勝のPK戦秘話「ハンドはするしコイントスは負けるし、逆に笑えてきたんです」 

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澤田将太

澤田将太Shota Sawada

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photograph by2022VFK

posted2022/12/27 11:07

“甲府20年目で初タイトル”山本英臣に聞く天皇杯決勝のPK戦秘話「ハンドはするしコイントスは負けるし、逆に笑えてきたんです」<Number Web> photograph by 2022VFK

天皇杯決勝のPK戦に臨むヴァンフォーレ甲府の山本英臣。「決めれば優勝」という状況のなか、どんな心境で5人目のキッカーを務めたのだろうか

“ジェフ時代の後輩”阿部勇樹への感謝

 甲府在籍20年目で悲願の初タイトルを手にした山本だが、そもそも20年以上もプロ生活を送れる選手はほとんどいない。1980年6月生まれの山本と近い世代には、コンサドーレ札幌の小野伸二(79年9月生まれ)、ジュビロ磐田の遠藤保仁(80年1月生まれ)、先日引退を発表したばかりの中村俊輔(78年6月生まれ)など、錚々たるビッグネームが並ぶ。天皇杯の中継で解説を務めた80年10月生まれの中村憲剛は同学年だ。こういった面々のなかに、ライバル視する選手はいるのだろうか。

「いやいや、名前が出た方々はレベルが違いますよ。みんな代表経験者ですし、『到底敵わない』と思いながらここまできましたから。ただ、それでもこうして長くやれていることは、ほんのちょっと、本当にちょっとだけ誇りに思ったりもしています(笑)。ライバルというのはおこがましいですが、ずっと意識していたのは、ジェフのユースで一緒だった1歳下の阿部勇樹ですね。

 フィジカルも技術もあって、ボールをキープできて、ディフェンスも強い。よく彼のキックを真似して練習しました。先輩・後輩という関係を抜きにして僕の理想を体現していたし、阿部が基準になってくれたから、『代表はこういうレベルなんだ』と自分の実力を冷静に測ることができた。ジェフ時代は正直『なんでこんなスゴいヤツがひとつ下にいるんだよ……』と思っていましたが(笑)、今では感謝しています。当時は素直な気持ちなんて言えなかったけど、できればちゃんと『ありがとう』って伝えたい。この歳までやってこられたのは、彼の存在が大きいですから」

 自身を育ててくれたジェフにも感謝の言葉を述べた。

「ジェフでは、当時としてはかなり進んだ技術論・戦術論を学ばせてもらいました。人として成長させてくれたのが甲府で、サッカーの根本を学んだのはジェフだと思っています。ジェフで育っていなかったら、そして阿部がいなかったら、僕はこの歳までプレーできていないでしょうね」

【次ページ】 「5歳の息子が『もう引退すれば?』って(笑)」

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