——勝ち点6は保証になりますか？

トルシエ　ドイツ対スペイン戦の結果にもよるが、6ならばドイツの可能性を無くしうる。しかしドイツがスペインに勝つと、逆の可能性（3カ国が勝ち点6で並ぶ）が生じて厄介だ。

——あなたにとってもこの勝利は大きな驚きでしたか？

トルシエ　私は日本が勝つかもしれないと試合前に言っていただろう。日本が勝てる可能性はある。初戦は何が起こるかわからないと。

　とはいえ前半のドイツは素晴らしかった。スピーディなパスワークで日本にボールを奪う機会を与えなかった。日本は引いて守ることに専念せざるを得なかった。

ドイツを分断した日本の戦略

——日本のシステム変更と選手交代が流れを変えたにしても、後半のドイツがあそこまでリズムを失ったのは驚きでした。

トルシエ　繰り返すが日本の戦略がドイツというマシンを壊し、ドイツのパスワークを分断した。前半のドイツは70％を超えるボール保持率だったが、突如ボールのコントロールを失い後退して守らざるを得なくなった。その結果、選手は疑心暗鬼に陥った。そうなるとサッカーではすべてが即座に変化する。日本の同点弾がドイツを混乱に陥れ、日本の戦略が彼らの組織を崩壊させた。

ドイツを失意のどん底に陥れるきっかけとなった浅野のトラップ　©Kiichi Matsumoto/JMPA

——ドイツは優勝候補のひとつですが、そんなチームでもひとたび弱さを見せるとこうなるということですか？

トルシエ　それはどこも同じだ。日本とドイツが10回戦ったら、8回は日本が負けるだろう。

——力関係はそうです。

トルシエ　だから日本が勝つためには、すべてを自分たちが望む方へと持っていかねばならない。運にも恵まれる必要がある。そこが勝負を分けるが、10回の戦いでドイツが8回勝つのは間違いない。ドイツの実力に変わりはないが、1試合ではそれが損なわれることもある。そうさせたのは日本で、森保の大胆なコーチングがドイツというマシンを破壊した。彼はリスクを冒すことを厭わなかった。そして報われた。また後半に自信を取り戻した日本の選手のクオリティの高さも勝利の要因だった。自信を得たときの日本は、世界のどのチームでも倒すことができる。いずれにせよ素晴らしい勝利だった。

——わかりました。メルシー、フィリップ。

トルシエ　私は明日、膝の手術をする。明後日の都合のいいときに電話をくれ。

——成功を祈っています。