「清原にはアウトコースだけで勝負したい」

　桑田は外角低めの真っ直ぐをコーナーぎりぎりに決める投球を身上としていた。第1戦で清原にスライダーを本塁打されて熱くなったのか、外の真っ直ぐなら清原を抑えられる、そういう勝負をさせてほしい、と言うのだ。

「桑田独特の美学やろうな。ホームベースの外半分しか使わない。内半分を使って抑えるのは自分の投球じゃない、というわけよ」

　5－1と4点をリードしていた6回、ワンアウト、走者なしの場面で清原を迎えると、桑田は内角のサインに頑なに首を振った。根負けした村田が外角への真っ直ぐを“許可”すると案の定、清原がバックスクリーンヘ目の覚めるような一発を打ち込む。8回もまったく同じ状況で同じ直球を投じ、2打席連続でバックスクリーン直撃弾を食らった。

長嶋監督が3勝目後、村田に伝えたこととは

　3勝目を挙げて王手をかけた試合後、監督の長嶋茂雄は村田にこう言っている。

「明日もあんなことやったらダメだぞ」

　第6戦の先発はまた息の合う槙原だった。清原を3打数無安打に抑え、3－1で槙原が完投し、巨人の日本一が決まった。村田は、清原に打たせてシリーズに勝ったのである。

MVPに選出された槙原　©JIJI PRESS

　なお、清原は'96年オフ、憧れの巨人へFA移籍している。周囲に腫れ物扱いされる中、村田の言うことはよく聞いていたそうだ。

＜松井編、イチロー編につづく＞