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先輩選手「あの“気づき”で捕手が務まるのか?」巨人・小林誠司(33歳)がカラを破れない理由《ナゾの2塁送球、打率は2年連続1割未満》

posted2022/06/12 11:03

 
先輩選手「あの“気づき”で捕手が務まるのか?」巨人・小林誠司(33歳)がカラを破れない理由《ナゾの2塁送球、打率は2年連続1割未満》<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

球界でも屈指の強肩を誇る小林誠司だが、捕手として“突き抜けられない”のはなぜか?

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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Hideki Sugiyama

 怒りが想像できる。

 6月8日の西武対巨人戦。4回の西武の攻撃だ。1死から巨人先発のマット・シューメイカー投手が3連打を浴びて1点を先制され、なお二、三塁という場面だった。ここで巨人は8番・外崎修汰内野手に、意表を突くスクイズを決められて2点目を奪われた。

 ただここまでは巨人ベンチの原辰徳監督もまだ我慢できたのかもしれない。

 さらに四球の一、三塁で巨人バッテリーがしてやられたのである。

 初球ファウルの2球目だった。

 一塁走者の滝澤夏央内野手がスタートを切る。投球を受けた小林誠司捕手が三塁走者のブライアン・オグレディ外野手を全くケアしないで、慌てて二塁に送球してしまった。その瞬間にオグレディがホームに突っ込んだ。二塁ベースカバーに入った中山礼都内野手からの本塁送球がワンバウンドとなる間に、巨人は重盗で3点目を奪われてしまったのである。

心理戦を逆手に取られた追加点に原監督の怒りは……

 この場面、本来ならば重盗を想定して、事前に一塁走者が走ったケースには捕手が二塁に擬投して三塁走者をケアするか、低い送球で投手がカットする。あるいは二塁のカバーに入る選手が、三塁走者の動きをケアしながら前に出て対処する。ただ、三塁走者が外国人選手だったこともあり、そういう想定をバッテリー間で行っていなかった結果、いきなり小林が二塁に送球し、まんまと重盗を決められてしまったのである。

 司令塔としての小林の明らかなミスだった。

 実はこの重盗は巨人・原辰徳監督がよく用いる作戦でもある。以前に一塁と三塁という違いはあるが、一塁走者に外国人選手のアレックス・ゲレーロ外野手がいるときに、動かないはずのゲレーロを走らせてまんまと成功させたケースもあった。

 意表を突くスクイズを決められエアポケットになった心の隙間に、三塁走者は動きにくい外国人選手という油断を西武ベンチに見抜かれた1点だった。最も自分が得意とする心理戦を逆手に取られた追加点。だからこそ決められた瞬間の原監督の怒りは、まさに沸点に届くものだったと想像できる。

 そして翌日、先発予定だった菅野智之投手が発熱で登板を緊急回避したこともあったと思うが、小林の名前は先発メンバーから消え、代わってプロ3年目の山瀬慎之助捕手がマスクを被った。

【次ページ】 グラウンドで何を考えているのか分からないときがある

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