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平野歩夢の快挙を伝えた“詳しすぎる実況” TBS新夕悦男アナを変えた先輩の教え「何でファイティングポーズを取っていないんだ」

posted2022/03/18 11:03

 
平野歩夢の快挙を伝えた“詳しすぎる実況” TBS新夕悦男アナを変えた先輩の教え「何でファイティングポーズを取っていないんだ」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

バレーボールや野球、駅伝など多くのスポーツを実況してきたTBS新夕悦男アナウンサー(47歳)。今のスタイルを築く上での“転機”を赤裸々に語った

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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Yuki Suenaga

北京五輪スノーボード男子ハーフパイプで実況を担当したTBS新夕悦男アナウンサーのインタビューをお楽しみください。あの“詳しすぎる実況”のルーツとは?(全2回の2回目/前編へ)

 次々と繰り出される技を、スラスラと伝える。TBS新夕悦男アナウンサーの実況は、視聴者のみならずスノーボード関係者をもうならせた。

 あのアナウンサーは何者だ。

 なぜあんなに詳しく、滞ることなく言葉にできるのか。

「人類史上最高難度のルーティン」というキラーワードと共に、スポーツ新聞やテレビでも新夕への注目が集まる中、実は声を大にして言いたかったことがある。

 いやいや、そのクオリティ、新夕さんなら当たり前だ、と。

 何を偉そうに、とお叱りを受ける前に言わせてほしい。新夕が在籍するTBSでは世界選手権やネーションズリーグとバレーボールの国際大会が数多く放映されている。新夕は男女問わず試合の実況を担うが、そこで発揮されるのが、解説者顔負けの「鋭い視点」と攻守が目まぐるしく入れ替わる中で飛び出す「考察」だ。

 打った、決まったという結果だけでなく、そこに至る経緯を解説者に問い、「何が起きて点が入ったのか」を伝える。いわば“詳しすぎる実況”。北京五輪で平野歩夢の繰り出す技のすごさを伝えたように、新夕はバレーボール中継において常に話題の人物だった。

中学、高校はバレーボール部に所属

 名物実況ともいうべき現在のスタイルを築く契機は、女子バレー日本代表が銅メダルを獲得した2010年の世界選手権。サーブの狙いや相手ブロックとの駆け引きなど、多くの選手や監督が戦術を語る際に専門用語を扱う機会が増えた頃だった。

 特に顕著だったのが、チームの肝となるセッターの話。宇佐美大輔(現・雄物川高校監督)や竹下佳江(現・姫路ヴィクトリーナ取締役球団社長付エグゼブティブアドバイザー)の言葉には、当たり前のようにさまざまな専門用語が飛び出し、この1点を取るためにどんな仕掛けがあったのかを知ることができた。これを実況でわかりやすく伝えることができれば、もっとバレーボールの面白さを伝えられるのではないか。中学、高校とバレーボール部だった新夕は、もともと競技に対する興味が高かったことも手伝い、選手やスタッフを質問攻めにした。

 加えて大きかったのが、国際大会で来日する世界を率いる名将たちに直接、話を聞けたこと。新夕は当時のエピソードを明かす。

【次ページ】 「缶コーヒーを持って監督を待ち伏せして…」

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