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興奮する選手に「俺とやるか?」、客の投げたパイプ椅子が直撃…“最強のレフェリー”和田良覚が「嫌われてナンボ」の仕事を続けるワケ

posted2022/03/04 17:00

 
興奮する選手に「俺とやるか?」、客の投げたパイプ椅子が直撃…“最強のレフェリー”和田良覚が「嫌われてナンボ」の仕事を続けるワケ<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

長いキャリアの中で、数え切れないほどの試合を裁いてきた和田良覚。一部では“最強のレフェリー”とも称されている

text by

澤田将太

澤田将太Shota Sawada

PROFILE

photograph by

Kiichi Matsumoto

「レフェリーなんて割に合わない仕事なんですよ」

 UWFインターナショナル、リングス、パンクラス、K-1、PRIDE、RIZIN……多くの格闘技イベントでレフェリーを務めてきた和田良覚は、約30年もの間リングの中から選手たちの戦いを見届けてきた。なぜ和田は「割に合わない」と言いながらレフェリーの仕事を続けるのか。スキンヘッドの強面な外見とは裏腹に、気さくな口調でその真意を語ってくれた。(全2回目の1回目/後編へ)

◆◆◆

試合中にフックが入って失神「歯が2本抜けました」

――和田さんと言えば、『THE OUTSIDER』で興奮する選手に「俺とやるか?」と声をかけて制したシーンが印象的です。

 お恥ずかしいです(笑)。地下格闘技系は他にもたくさんやっているんですけど、試合前にはルールの他に「君たちはプロじゃない。格闘技は本当に危険だぞ」と必ず説明するようにしています。でも不良の子ってメンツを大事にするんで、やりすぎちゃうことがあるんですよ。そういう場合は、ああやって強く言う時もありますね。舐めた口をきかれて単純に怒ってしまっている部分もありますが(笑)。

――地下格闘技の大会だと危険なこともたくさんあるんじゃないですか?

 たくさんありますよ。選手の仲間の子が判定に不服があったみたいで、客席からパイプ椅子をリングにぶん投げて、それが僕に直撃したんですよ。さすがにブチギレましたね。「どこのどいつだ! 卑怯者、上がってこい!」って。あっちは大勢で応援に来ているから、もしリングに上がって来られたら袋叩きにされていたと思いますが、マジで投げた奴だけはいわしてやりたかった。だってパイプ椅子が直撃ですよ(笑)。

 地下格闘技の中でも特にアンダーグラウンドな大会になると、ダークな稼業の人たちが選手をスカウトにくることがあるんですよ。血の気の多い若者を見つけるには最適な場所なので。僕は態度や口のきき方がよくない選手によく「礼儀を大切にしろ」と教育するんですが、本職の人が笑いながら「おっかない体育の先生みたいだ!」と言っていましたね(笑)。

【次ページ】 高田延彦の勧誘でレフェリーに「夜逃げしようかと…」

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