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天才スケーター・加藤条治が語る“金メダル候補という人生”…五輪で銅獲得も「世界で3番の人だと認識されますから」 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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posted2022/02/11 11:03

天才スケーター・加藤条治が語る“金メダル候補という人生”…五輪で銅獲得も「世界で3番の人だと認識されますから」<Number Web> photograph by JMPA

2010年バンクーバー五輪の銅メダリスト・加藤条治。元世界記録保持者が語った“金メダル候補”の重圧とは

「転倒したのは完全な技術不足です。一歩前に右足のバランスを崩していて、次に左足を置くか置かないかくらいのところでポンと飛んだ。耐える暇もなかったんです。最近は練習を積み重ねられず、ほぼ調整だけで試合に合わせている。だから、あの転倒に関しては不運といえばそうだけど、起こるべくして起こった転倒とも言えます」

賭けだった選考会。「悔いはありません」

 コーナー手前までのところをもう少し抑えていれば最後まで伸びたのではないかという見方もあるが?

「自分のレベル的に、それをやって勝てる状態じゃなかった。どこも力を抜けなかった。だから、ほぼ賭けというレース、ミスがあったらもうしょうがないというレース。そういう意味では悔いはありません」

 今後については、次のオリンピックを狙うことはないとしながらも、引退するということを決めたわけでもない。

「代表選考会のレースしか見ていない人からは『まだいけるんじゃないか』と言われるけど、あそこに合わせるのはものすごく大変だった。もしかすると、4年に一度の大会に合わせるのは不可能じゃないかもしれないけど、それでは選手として成立しない。本気のスケートを続けていくのは現実的じゃないと今は思っています」

 現時点で来季のことはまだ決めていないというが、代表選考会で見せた、何があっても棄権にだけはしたくない、順位を残したいという気持ちのこもったレースは、見ている者の胸を揺さぶった。

「あのときは、この一本のレースのためにサポートしてくれた人がすごく多かったんです。所属(博慈会)もそうですし、スポンサーもそう。味の素のチームのサポートも多かった。あのレースは支えてくれた人たちとの集大成のレースでもありました」

 記録、成績、そして記憶。すべてを残したのが加藤条治というスプリンター。その背中を見て成長してきた後輩スケーターたちの北京五輪での活躍に期待したい。(つづく)

#2に続く
清水の金メダルから24年、新エース・新濱立也が巻き起こすセンセーション…加藤条治「人間はそこまでいけるんだと」

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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