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「今季限りで退任」阪神・矢野監督の“衝撃発言”に、藤浪晋太郎や佐藤輝明らが戸惑わなかった理由「選手たちはもう自立している」
text by
豊島和男Kazuo Toyoshima
photograph byKYODO
posted2022/02/09 11:25
プロ野球界の“正月”に今季限りでの退任を発表した阪神・矢野燿大監督
「監督を長く(長期間)やりたいとは思っていない」
一軍監督に就任した当初から近しい人には、そう明かしていた。3年契約を結んでスタートした監督生活も自身は「1年勝負」にこだわっていた。阪神の監督にとって複数年契約はあってないものと同じ。その“前例”を目の前で見てきた。
中日から交換トレードで阪神に移籍した1998年から5人の監督の下でプレー。2016年には指導者として古巣に復帰した。選手時代、コーチ時代も近くで数多くの指揮官の後ろ姿を見てきた。名将・野村克也氏や、レジェンドの金本知憲氏でさえ監督としては志半ばでタクトを置いた。優勝に導いた監督以外は実に寂しい去り方をしている。
これまでも「お家騒動」と揶揄されるように阪神の監督人事は多くの人を巻き込んだ騒動となることが多々あった。負の歴史からみても新たに1年契約で迎える今季はシーズン中にも「お家騒動」が勃発する可能性は想定内。仮に昨季と同様に熾烈な戦いを展開している勝負どころで突如として監督人事の話題が表面化すれば、それこそグラウンド外が一気に騒がしくなることは目に見えていた。
“その日”を見据えての先手だった?
「賛否両論、いろんな意見があるということはもちろん想像して伝えさせてもらった。でも、周りがどう言うかより、自分がどうしていくかということと、チームに何が必要かということを考えて話した」
矢野監督は至って冷静だった。必ず訪れる、“その日”も見据えて先手を打ち、周囲の雑音を封じ込めようとする狙いも考えられる。せめてシーズン中は野球だけに集中させてやりたいと思う教え子への親心かもしれない。今回の電撃発表に動揺した選手が存在したことは事実だろう。しかし、多くの選手たちは、驚きは見せながらも戸惑いは感じさせなかった。