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新庄剛志は森本稀哲と稲葉篤紀いわく「気遣いの人」? 90~00年代のカリスマ監督、現代の「引く」監督像とも違う“期待感”とは 

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花田雪

花田雪Kiyomu Hanada

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photograph byHideki Sugiyama

posted2021/11/03 11:03

新庄剛志は森本稀哲と稲葉篤紀いわく「気遣いの人」?  90~00年代のカリスマ監督、現代の「引く」監督像とも違う“期待感”とは<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

日本ハム時代、数々のパフォーマンスで楽しませた新庄剛志。監督としてどのようなスタンスを取るのか

 新庄氏は、誰が見てもまぶしすぎるくらい強烈な輝きを放つ人物だ。それが多くの人を惹きつけ、球場に人を集める要因にもなった。ただ、コロナ禍まっただ中の現代、その強すぎる光が、今の若い選手にどう映るのか――。

 今年、品川駅のコンコースに表示された「今日の仕事は、楽しみですか。」という広告が大炎上した。SNS上では「ディストピアだ」「気分が滅入る」といった批判が噴出。これを受けて広告主は謝罪、出稿した広告の配信を停止した。

「仕事を楽しもう」という一見ポジティブに思える言葉すらネガティブに捉えられてしまう時代だ。

「理想の上司像」と「理想の監督像」はリンクする

 もちろん、一般のサラリーマンと、プロ野球選手は違う。

 ただ、時代時代でいわゆる「理想の上司像」と「理想の監督像」はリンクする部分もある。

 かつては広岡達朗、森祇晶のように徹底した「管理」の名のもと、自らの野球観を選手に注ぎ込むスタイルが野球界の主流だった。野村克也はそれに加え、選手を説得する材料として「データ」という客観的事実を持ち込み、チームをまとめ上げた。

 2000年代に入ると、原辰徳や星野仙一といった監督が選手を鼓舞し、モチベーションを上げていくスタイルで一時代を築いた。

 共通していたのは、どんなスタイルであれ監督に求められるのが絶対的な「カリスマ性」だったことだ。監督は、チームの象徴的存在であり、顔でもある。「森西武」「野村ヤクルト」「原巨人」「星野楽天」など、監督の名前がチームの冠名となって報道されてきたことからも、それはうかがえる。

 しかし、2021年の今はどうか。

「高津ヤクルト」「中嶋オリックス」とは呼ばれない

 近年結果を残している指揮官の多くは、選手への求心力は発揮しつつも、どこか「引く」能力に長けている。多くを語らず、選手の自主性を尊重する。その上で、必要なときに「ポン」と軽く背中を押し、効果的な言葉をかける。今季、リーグ優勝を果たしたヤクルトの高津臣吾、オリックスの中嶋聡両監督も、まさにこのタイプだ。

 だから、両チームとも「高津ヤクルト」「中嶋オリックス」とはほとんど呼ばれない。あの原監督も、第三次政権以降は、明確に「引く」姿勢を見せている。

 その意味で、新庄氏の底抜けの明るさ、放っておいても選手より目立ってしまうに違いないスター性が、現代の選手たちにどう受け止められるかは、未知数と言える。

森本、稲葉が語っていた「新庄さん論」

 ただ、新庄氏は世間のイメージとは違い、実は「気遣いの人」でもある。筆者自身、過去に多くの選手から新庄氏の「気遣い」エピソードを聞いてきた。

 例えば――引退直後の森本稀哲に話を聞いた際、こんなことを語ってくれた。

【次ページ】 新庄に求められるのは、トレンドに沿うことではない

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