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多田修平25歳は高3まで「全国レベルで優勝できなかった」…日本選手権1位に急成長するまで“不調だった3年間” 

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生島淳+Number編集部

生島淳+Number編集部Jun Ikushima + Sports Graphic Number

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posted2021/06/29 17:15

多田修平25歳は高3まで「全国レベルで優勝できなかった」…日本選手権1位に急成長するまで“不調だった3年間”<Number Web> photograph by Getty Images

日本選手権陸上男子100mを10秒15で制し、初の五輪切符を手に入れた多田修平

「パウエル選手のスタートのすごさに圧倒されました。パワー、出力が違うんですよ。彼はウェイトトレーニングを重視して、そこから僕も取り組むようになりました。ただ、日本と海外の選手では骨格も違うので、自分なりにアレンジしながらトレーニングしていたんですが、それがハマって。徐々にタイムが伸びていったんです」

 大阪陸協からの派遣、トレーニング。それが選手としての多田を変えた。今回、多田がオリンピック代表に決定して喜んだのは大阪陸協の面々で、関係者からすれば「わが子のような多田君」が、自分たちのプロジェクトからオリンピックの切符をつかんだのだから、その喜びは計り知れないものがある。

だが2018年以降、迷宮に入ってしまう

 海外でのトレーニングをきっかけに、2017年に多田はスプリンターとしての特性を確立した。

 おそらく、誰もがスタートダッシュを特質に挙げるだろうが、多田の自己分析によればそれは異なる。

「僕自身は、スタートよりも中盤の方が得意なんです。たしかに低空スタートが特徴的ですが、飛行機が離陸するような感じで、徐々に体を起こしていくというイメージでやっています。僕の場合、身体が立ってしまいがちな走りなので、スタートからすぐに体を起こしてしまうと風の抵抗を受けやすくなってしまうこともあり、スタートから“風をならす”感じで加速していき、そこから最高速に到達するイメージです。このスタイルは、中学時代から変わってないです」

 ところが2018年以降、多田は迷宮に入ってしまう。

 後半の失速を克服すべく、得意の序盤でピッチを抑え、最高速への到達地点を少しだけ後半に持っていく意識で練習に取り組んだ。ところがその結果、多田の特徴であるロケットスタートの出力が弱くなっただけでなく、左右のバランスも崩れ、自分が得意とする中盤への加速が思うように進まなくなった。

 2018年のシーズンベストは10秒21、2019年は10秒12。この年は日本選手権の100mで5位となり、世界陸上の個人での代表入りを逃している。

 2020年は、コロナ禍に入ってレースが失われていったが、リモートインタビューした時には、復調の手ごたえをつかんでいた。

【次ページ】 “2つの日本記録”、引き立て役は偶然ではない?

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