15分、一瞬のスキを突かれてカウンターからクリスティアーノ・ロナウドに先制されたのは痛かったし、セットプレーで危険な場面を何度も作られたのは今後への反省材料だ。それでもミュラーは試合後、充実感を顔に浮かべてテレビインタビューに答えている。

「良くなっているという感触は試合前からあったけど、ポルトガルは優れたオフェンス陣を持ったチームだ。どんな展開になるかはやってみないとわからない。でも今日の試合に関しては先に失点したとはいえ、それまでの時間帯でいい感じでプレーができていたんだ。ポルトガルにとっては最初のチャンス。自分たちのCKから失点するのはいただけないけど、僕らにはエネルギーがあった。プレーを緩めるつもりなんて全然なかった。オフェンスに関して、フランス戦から少しポジショニングを微調整したんだ。今日の僕らは、初戦より勇気を持って、クリエイティブにプレーができたと思う」

「本当のドイツが戻ってきた」と称賛の声も

　願ったような結果が出なかったとき、うまくいかなかったことを指摘するのは定石だ。とはいえ、そこでやり方を変えることが得策というわけではない。忘れてはいけないのが、今回のメンバーで試合をしたのは、フランス戦が2試合目だったということだ。実戦は、ラトビアとのテストマッチしかなかった。

　世代交代をしながらチーム作りを進めていたドイツだが、コロナ禍の影響をもろに受け、大会直前にチームを作り直さなければならなくなった。ミュラーとフンメルスが復帰し、主軸と考えられていたサネやズーレが負傷などの影響で本調子とは言えないという事情も出てきた。

　そう考えると、フランス戦では勝点を手にすることはできなかったが、厳しい試合を通して修正点を明確に把握できたととらえることもできる。

1得点・2アシストの活躍を見せたゴセンスは「スピリットを見せることができた」と胸を張った©Getty Images

　ポルトガル戦で1得点・2アシストと大活躍をしたゴセンスは、試合後のインタビューで言葉に力を込めた。

「前日練習のあと、監督が僕たちに熱く訴えかけてきたんだ。『僕らは大会モードに切り替えないといけない』って。だから、自分たちにできることを出し切る準備ができていた。オフェンスでもディフェンスでも僕らのスピリットを見せることができた」

　イタリアの『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は「本当のドイツが戻ってきた」という見出しでポルトガル戦の戦いぶりを称賛していた。確かに、ハバーツが激しいチャージでペペを倒したり、クロースが鋭いタックルでボールを奪い返したりするシーンからは彼らの試合に対する意気込みが感じられた。

　もちろん、2戦を終えて満足しているわけにはいかない。まだ決勝トーナメント進出が確定したわけではない。

　レーブは「W杯での痛みは、次のビッグトーナメントで取り返さなければならない」と話していたことがある。6月24日、グループステージ最終戦の相手ハンガリーはフランスと引き分けている。簡単な相手ではない。

　それでも、ポルトガル戦で見せたパフォーマンスによりドイツ国民の信頼は完全に取り戻した。ホームのミュンヘンで迎える運命のハンガリー戦、自力で決勝トーナメント進出を決められるか。