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センバツNo.1腕・畔柳亨丞と“球数制限問題” 「準決勝は121球」になっても中京大中京監督が続投させたワケ

posted2021/03/31 06:00

 
センバツNo.1腕・畔柳亨丞と“球数制限問題” 「準決勝は121球」になっても中京大中京監督が続投させたワケ<Number Web> photograph by KYODO

投手の肩ひじを守るため設けられた「1週間で500球以内」の制限。しかし畔柳のようなケースが起きることが今後もあるだろう

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間淳

間淳Jun Aida

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 センターへの飛球が味方のグラブに収まったのを確認した中京大中京のエース畔柳亨丞。ガッツポーズをして捕手・加藤優翔の方へ歩み寄る。照れくさそうな笑みを浮かべながらタッチをかわすと、頭をポンと叩かれた。

「加藤に“無駄な球数を投げすぎ”と言われました」

 6点リードの9回。対戦相手の東海大菅生は、2回戦の京都国際戦で9回に3点を奪い、逆転サヨナラで勝ち上がってきた。勢いをつけてはいけない。隙は見せられない。畔柳はギアを上げた。自慢のストレートで押す。しかし、それが力みにつながった。

 先頭打者に、この試合3つ目の四球。2アウトを取るが、3番・千田光一郎と4番・堀町沖永に連続四球を許し、満塁のピンチを招いた。タイムを取って仲間とマウンドに集まると、加藤から「点差を見ろ」と言われ、冷静さを取り戻す。東海大菅生の5番・小池祐吏をストレートでセンターフライに仕留め、完封で準決勝に駒を進めた。

「球数はもちろんだが、勝たないと意味がないので。球数は気になる部分はあるが、1球1球ボールに魂を込めて投げるのが自分の持ち味。そこは最後まで貫けてよかったと思う」

6点リードも「継投」で監督は頭を悩ませた

 投打がかみ合った中京大中京の快勝だった。だが、1つの疑問と不安が残った。

 中京大中京は5回までに6点を奪い、試合を優位に進めていた。畔柳の球数は、7回を投げ終わった時点で97球。今大会は「1週間で500球」の球数制限がある。組み合わせ抽選で1回戦が大会第6日目の3月25日と最も遅かった中京大中京は、1回戦から準決勝までをちょうど1週間で消化する。球数制限の影響を唯一受けるチームといってもいい。

 この試合、高橋源一郎監督の頭の中にも「継投」の2文字が浮かんでは消えていった。

 試合後、こう明かした。

【次ページ】 畔柳は試合を締めるまでに138球を要した

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