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【現役引退】ダン・カーターは“ええかっこ”をしないから神戸で愛された 世界トップの司令塔の人柄に触れた2年間

posted2021/03/08 11:03

 
【現役引退】ダン・カーターは“ええかっこ”をしないから神戸で愛された 世界トップの司令塔の人柄に触れた2年間<Number Web> photograph by Getty Images

2月20日に自身のインスタグラムで現役引退を発表した元ニュージーランド代表SOダン・カーター。日本でも華麗なプレーと飾らない言動でファンを魅了した

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倉世古洋平(スポーツニッポン新聞社)

倉世古洋平(スポーツニッポン新聞社)Yohei Kuraseko

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 昨シーズン限りでトップリーグ(TL)神戸製鋼コベルコスティーラーズを退団し、スーパーラグビーのブルーズに加入していたSOダン・カーターが、2月20日、現役引退を自身のSNSで発表した。2シーズン在籍した神戸製鋼では日本一に貢献するなど、世界最高峰の実力を遺憾無く発揮した司令塔はどんな人物だったのだろうか。近くで取材を重ねてきた記者が、その思い出を振り返る。

 元ニュージーランド代表SOダン・カーターの愛称「DC」は、日本向きだと思っていた。世界年間最優秀選手賞3度受賞、W杯連覇といった華やかな経歴が、80年代に国内で流行した「DCブランド」の高貴さとマッチすると感じたからだ。

 実際、洗練された世界トップクラスの技術で、神戸製鋼に加入した2018年にはチームを15季ぶりのリーグ優勝、18季ぶりの日本一に導いた。在籍した2シーズン、出場した試合で1度も負けを経験しなかったのは、司令塔としていかに優秀だったかを物語っている。

 まさに「DCブランド」のような輝きを放ったカーターだが、素顔は着飾ったところが全くない人だった。そんなカーターが2月20日、SNSで現役引退を発表した。38歳での区切りに、神戸製鋼の選手やファンから感謝の声が改めて上がったのは、“ええかっこ”をしない気さくな人だったからだと感じている。

「自伝」なのに失敗談が満載だった

 以前、『ダン・カーター自伝 オールブラックス伝説の10番』(東洋館出版社刊)について聞いたことがあった。この本、“DCの失敗話”が満載。自伝は「オレはこんなにすごいんだ」と、いいところをたくさん伝えたくなるものだと思うが、お酒でやらかし、故障で苦しむ話が、お約束のように何度も出てくる。なぜ、マイナス面をそこまで強調したのか。

「選手は華やかな部分ばかりじゃない。そこに至るまでに色々な物語がある。それを知ってほしいんだ」

 こんな感じで、いつも自然体だった。

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