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IWGP世界ヘビー級王座への困惑…飯伏幸太が「本当の神になった!」と叫ぶ真意とは【棚橋、中邑、そして猪木】 

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原壮史

原壮史Masashi Hara

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photograph byMasashi Hara

posted2021/03/03 11:03

IWGP世界ヘビー級王座への困惑…飯伏幸太が「本当の神になった!」と叫ぶ真意とは【棚橋、中邑、そして猪木】<Number Web> photograph by Masashi Hara

飯伏幸太は白いIWGPインターコンチネンタルのベルトに強い思いを抱く

飯伏幸太が「神」になったとはどういうことか

 これは生え抜きの選手には決してできないことだ。なぜなら、IWGPヘビー級王座、IWGPジュニアヘビー級王座に憧れて新日本の門を叩いているのだから。「神」が創った世界に憧れ、それを目指して生きてきたのだから「神」が築いた価値観を変えようとは思わない。両方とも尊重しているとしても、IWGPインターコンチネンタルの歴史を残したいがためにIWGPヘビー級と並べようという発想は出てこない。

 自分たちには決してできないこと、「神」にしかできないことだ。

 外からやってきた飯伏は、本来であれば「神」である創始者のみが為せることを創立49年目にやってみせた。来年50周年を迎える新日本プロレスの新たな歴史の創始者という「神」になったのだ。

「初代」IWGP世界ヘビー級王者に困惑も

 もちろん、火種は残っている。

 IWGPヘビー級と並んだIWGPインターコンチネンタルを不純物と捉えるかどうかは答えの出ない争いだ。ただしこれは、今回の内藤戦のように異を唱えた相手と戦って飯伏が勝てばいずれ決着することになる。

 問題は、3.4の飯伏vsエル・デスペラードの勝者が「初代」IWGP世界ヘビー級王者となる、と発表されたことだ。いくら歴史が継承された存在だとしても「初代」だ。飯伏は、物質的には1本にしつつも「第73代IWGPヘビー級・第27代IWGPインターコンチネンタル王者」という呼ばれ方は継続したいと言っていたが、それは現実的ではなかったようだ。

 名前が変わり、ベルトは新調され、「初代」と呼ばれる。これでは、いくら継承した存在と言っても、歴史は実質的に区切られることになる。この点で、この新王座がこのまま素直に受け入れられるとは思えない。長年新日本プロレスを見てきたファンはもちろん、選手たちも反応に困っているだろう。当の飯伏でさえも、本来の意図とは少々異なるものになっているはずだ。

 ファンの煮え切らない気持ちの代弁者になる筆頭はオカダ・カズチカだ。IWGPヘビー級王座至上主義であり、最多連続防衛回数の記録を持ち、ブシロード体制になってからの新時代の象徴だったオカダは、飯伏が勝利する前日に「IWGPの戦いに行く」と宣言していた。自分がいないうちに急転直下で決まってしまった新王座にどういう反応を示すだろうか。

 オカダだけではなく、NEVER無差別級のベルトをIWGPヘビー級王座を巡る戦いに再び戻るための足がかりにしていたはずの棚橋はどう反応するだろうか。ミスターIWGPだった永田裕志も、歴史的なダブルタイトルマッチを戦った天山広吉と小島聡もいる。歴代の王者たちはどう反応するだろうか。

 それは、3.4の旗揚げ記念日、そしてニュージャパンカップを待つことにしよう。


【2021年2月28日 大阪城ホール〈新日本プロレス:Castle Attack〉第6試合 IWGPインターコンチネンタル選手権試合 ○チャンピオン:飯伏幸太(27分50秒 カミゴェ→体固め)●チャレンジャー:内藤哲也】

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