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原巨人「完敗、完敗、完敗…」不完全燃焼感だけの日本シリーズ…監督・原辰徳に残された“最後の宿題” 

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/11/26 18:30

原巨人「完敗、完敗、完敗…」不完全燃焼感だけの日本シリーズ…監督・原辰徳に残された“最後の宿題”<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

工藤ホークスに2年連続スイープされた原巨人だが…

 最後まで38歳の中島宏之や亀井善行らベテランに頼った巨人と、同じく38歳の内川聖一をシーズンラストまで一軍に上げず走りきったソフトバンクの差。もちろんそれは球団側も痛いほど自覚しているはずで、今年のドラフト会議で巨人の史上最多12名の育成選手の指名が話題になったが、次代に向けてチーム編成のベースからの再構築を始めようとしている。

限りなく透明に近い日本シリーズ

 それにしても、全戦DH制の受諾、第2戦先発に今季5勝の今村信貴の奇襲ともとれる起用と、今思えば、戦前から原監督もまともに対峙したら勝算は薄いと感付いていたのではないだろうか。個人的に巨人ファンとして、これほど不完全燃焼感が強い日本シリーズは初めてだ。昨年の4連敗だって、名実ともに「阿部慎之助の引退から新時代へ」というテーマがあった。13年の星野楽天との対戦でも、3勝3敗で迎えた第7戦で最後はリリーフ田中将大の前に日本一を逃したが、悔しさの中にも「やることはやった」という妙な充実感があった。

 でも、G党にとって今シリーズは無だ。限りなく透明に近い日本シリーズ。グラウンドを叩いて悔しがる元首位打者の長谷川勇也とは対照的に、代打であっさり三振してうつむきながらベンチに戻る巨人のもう若手とは呼べない選手たち。ゲームセットの瞬間、ただ虚しさだけが残った。なのに、今日から試合がないんだよ。

俺らにはこんな時こそ野球が必要だった

 第4戦は球場全体の雰囲気を味わえてテーブル付きで原稿メモを取りやすい外野のHIPバー指定席を、菅野のNPBラスト登板になる可能性も高い第5戦は近くで見ようとプレミアムソファ席のチケットを取っていた。でも、その第5戦はない。今年のプロ野球が終わっちまったんだ。不完全燃焼感を晴らすには、来季開幕まで4カ月も待たなければならない。

 ……ってこの原稿は博多のホテルでコンビニおにぎりをレッドブルで流し込みながら書いているが、昨夜あれだけ情けない負け方をしたのに「もう見るのやめる!」じゃなくて、「来年も日本シリーズへ行くから早く開幕してくれよ!」なんて思う野球ファン特有の明日を信じるメンタリティに自分でも驚いている。

【次ページ】 監督・原辰徳、最後の関門

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