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「今の学生は寄り道が苦手」 大学教授がサッカークラブ運営で見た“最近の若い子”の実像とは 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byChuo University

posted2020/11/11 17:01

「今の学生は寄り道が苦手」 大学教授がサッカークラブ運営で見た“最近の若い子”の実像とは<Number Web> photograph by Chuo University

2017年、東京23FCに関わる特別講座での1枚。当時監督だった羽中田昌監督と選手らにヒアリングする

スポーツビジネスを地域社会で学ぶ

 欧州のやり方がベストと言うつもりはないし、どこも一緒とも言わないが、僕が暮らすドイツは、子供の頃からミスを恐れずにチャレンジすることがいいことだという空気感があり、子供たちはその中で育っていく傾向が強い。

 だからこそ、みんな自分の意見をしっかりと口にして、相手とディスカッションして、意見のすり合わせをしていく。大人と子供の関係も同様だ。「子供だから」という理由で説明を省いたりはしない。

 スポーツビジネスの仕組みを、地域社会の中で学ぶ機会も多い。

 例えば、地元のスポーツクラブで活動する子供たちは、コーチや保護者が見つけてきたスポンサーのおかげで、自分たちのユニホームやジャージが無償で、あるいは相当安価で購入できることを知る。だから、何かあるときはスポンサーのところで商品を買うという選択を考えるようになる。

クラブハウスで飲み物を買う、その理由

 思い出した話がある。もう10年以上前の話だが、当時僕が監督をしていたU15チームでクリスマスパーティをした。段取りについて、みんなとワイワイ話をしていた。

「クラブのロッカールームにご飯や飲み物を持ち寄って盛り上がろう。あ、飲み物は近くのスーパーで買ったら安いよね」

 子供たちの前で何気なく口にしたら、キャプテンがスッと前に出てこう言い出した。

「キチ、それはダメだよ。飲み物はクラブハウスで買わないと。ここにお金を落とすことが、僕たちのクラブ活動にとっても重要なんだから」

 衝撃的だった。彼はクラブ運営がどう成り立っているか理解していて、その中で自分たちが何をすべきかをわかっていた。生活の中に、スポーツクラブが成立するための仕組みが存在していることを痛烈に感じた。

 スポーツビジネスやマネージメントというものは、まずそうした日常にあるスポーツと地域、スポーツと地域住民の関係性を理解するところから始まる。

 だから、日本でもそうした関係性を自然に学べる場所が増えれば、スポーツビジネスの世界ももっと幅広く、もっと柔軟で、多くの可能性が生まれてくるのではないだろうか。

 今回のZoomインタビューで、渡辺教授と4人の学生と2時間あまり話すことができた。最初は緊張のせいか表面的な言葉になってしいた学生が、最後の方には熱を込めて自分の本音を自分の言葉で話しているのを聞いて、心に響くものがあった。

前編の『「ヒンディー語と小松菜」 がサッカークラブ運営のカギ!?』も関連記事からぜひお読みください)

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