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「今の学生は寄り道が苦手」 大学教授がサッカークラブ運営で見た“最近の若い子”の実像とは 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byChuo University

posted2020/11/11 17:01

「今の学生は寄り道が苦手」 大学教授がサッカークラブ運営で見た“最近の若い子”の実像とは<Number Web> photograph by Chuo University

2017年、東京23FCに関わる特別講座での1枚。当時監督だった羽中田昌監督と選手らにヒアリングする

「先生は全然答えを教えてくれません」

 だからこそ渡辺教授は、不確実な要素がどんどん出てくるプロジェクトを通して耐性も身に付けてほしいと語っていた。

「人間、生きていると不確実な状況を手探りで進まなきゃいけないときもあるわけです。企業に入って、言われたことをやるだけでは新しい仕事を生み出せるようにはならない。特にクリエイティブな取り組みをしていくうえでは、前もってすべて計算して先行きが見えているという状態は、なかなかないわけですから」

 不確実性への耐性。学生たちはこの言葉を聞いたとき一様に頷き、自分自身のこれまでと照らし合わせて考えていた。

「この講座で、先生は全然答えを教えてくれません。正解を知っているはずなのになんで教えてくれないんだろうって思った時期もありました。何回も悩んで、でもわからなくて、教えてほしいと思うのに教えてくれない。だから、自分で考えないと物事は前に進まないということに気づくことができたと思います」

 学生の1人、粟村さんはそう振り返る。

 もちろん、みんな失敗しようとして取り組むわけではない。自分たちで入念に検討して、調べて、分析して、アイデアをまとめて、自分なりの精一杯を現場でチャレンジしている。とはいえ、経験ある立場の人からすれば「考えが甘い」とか、「こんなアイデアで成果が出るの?」というケースも多いことだろう。

悩み抜いた挙げ句に相当な額のスポンサー料を

 大切なのは、失敗したあとの取り組みである。“失敗していいよ”と言ったとしても、失敗したことをなあなあで済ますわけではない。うまくいかなかったことを自分たちで持ち帰り、何が悪かったのか、どうしてうまくいかないのかを改めて考える。意見をぶつけ合う。そして新しいアイデアを生み出していく。何度も何度もそうした失敗を乗り越えていくことで、彼らは確かな成長を遂げていく。

 渡辺教授はこう語ってくれた。

「現在は新型コロナウイルスの影響もあり、うちの大学も対外活動は自粛中です。なので実際に動くことはほとんどできません。従来だったら、イベント開催に向けてスポンサー営業をどんどんしているところです。学生によっては何百件と電話を掛けまくっていく。

 でも、最初の頃はことごとくうまくいかない。どうすればいいかとうちひしがれてくる。それでもまずは自分たちで考えさせます。どうやったらお金を出してもらえるだろうか。自分たちの活動にとっても、相手側にとってもメリットになるアイデアはないだろうか。

 そうした試行錯誤を繰り返していくうちに頭の中が整理されて、新しいアイデアが出てくるようになるのです。数年前の話ですが、悩み抜いた挙げ句に相当な額のスポンサー料をゲットしてきたグループもあったんですよ」

【次ページ】 自分たちにも23FCにもメリットになるように

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