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ドラフト15年前の“くじ間違い”事件 高3の陽岱鋼を戸惑わせた「NPBのハンコ」問題

posted2020/10/21 17:04

 
ドラフト15年前の“くじ間違い”事件 高3の陽岱鋼を戸惑わせた「NPBのハンコ」問題<Number Web>

2005年ドラフト、当たりと勘違いして喜ぶソフトバンクの王貞治監督(右)とがっくり肩を落とす日本ハムのヒルマン監督

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田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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 ドラフト会議における「くじ引き」ハプニングといえば、2015年のヤクルト・真中満監督の“勘違いガッツポーズ”が直近ということで真っ先に思い出されるが、さらに遡ること10年前の2005年のドラフト会議こそが、まさに前代未聞のドタバタ劇の舞台となった。

 球界再編のスタート年だった当時、ドラフト会議にも改革のメスが入れられていた。

3年ぶりの“1巡目重複”

 新ドラフト導入の背景にあったのは、いくつかの球団がアマチュアの有力選手に対して裏金を渡していた問題が明るみに出たことだった。その温床となる逆指名制度の撤廃を主張する球団もあったが、結局は意見が一致することなく、この2005年は前年までの「自由獲得枠」という名称を「希望入団枠」と変え、枠を2から1へ減らすことで行われた。

 さらに、「高校生ドラフト」を10月、「大学・社会人ほかドラフト」を11月に開催するという分離方式も取り入れられた。

 従来は11月中旬に実施されていたドラフト会議だが、高校生の進路決定が遅くなる(特に指名漏れの場合の進学や就職への不安)デメリットがあったために、高野連からの要望もあり導入された。これをきっかけに、現在の10月のドラフト会議が定着していくことになる。

 逆指名全盛の時代においてその権利を持たない「高校生を対象にしたドラフト会議」が開催されたことで、1巡目で指名選手が重複する事態が3年ぶりに起きたのだった。

重複は、片山、辻内、そして陽

 2005年高校生ドラフトの当初の1巡目指名選手は以下の通りである(○印が指名重複)

 <セ・リーグ>

 広島・◯片山博視投手(報徳学園)
 巨人・◯辻内崇伸投手(大阪桐蔭)
 ヤクルト・村中恭平投手(東海大甲府)
 横浜・山口俊投手(柳ヶ浦)
 中日・平田良介外野手(大阪桐蔭)
 阪神・鶴直人投手(近大付属)

 <パ・リーグ>

 楽天・◯片山博視投手(報徳学園)
 日本ハム・◯陽仲壽内野手(福岡第一)
 オリックス・◯辻内崇伸投手(大阪桐蔭)
 西武・炭谷銀仁朗捕手(平安)
 ソフトバンク・◯陽仲壽内野手(福岡第一)
 ロッテ・柳田将利投手(青森山田)

 以上のように、片山に広島と楽天、辻内に巨人とオリックス、陽に日本ハムとソフトバンクの指名が重複した。

【次ページ】 「交渉権はソフトバンク」

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陽岱鋼
王貞治
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