JリーグPRESSBACK NUMBER

ポルトガル移籍・藤本寛也の代理人に聞くコロナ禍の欧州移籍市場、日本人の相場観 

text by

海江田哲朗

海江田哲朗Tetsuro Kaieda

PROFILE

photograph byJ.LEAGUE

posted2020/09/19 11:40

ポルトガル移籍・藤本寛也の代理人に聞くコロナ禍の欧州移籍市場、日本人の相場観<Number Web> photograph by J.LEAGUE

まだJ1での実績はないながら、ポルトガルへと旅立っていった藤本寛也。こういったケースは今後も増えていきそうだ

買取オプションの付いたレンタルという形

 近年、ヨーロッパのマーケットにおける日本人選手の立ち位置はどのように変化しているのだろう。

「需要が高いのは、2列目のミッドフィルダーとサイドバックの選手。いずれも先人たちが開拓し、世界的に評価を高めたポジションです。最近は早い段階で日本人選手を獲得し、収益を上げるビジネスモデルを確立しようとヨーロッパのクラブも計画的に動き出しています。求められるのは、そのためのスキームづくり。所属元のJクラブにも利益をもたらす仕組みをつくる必要があります」

 年代別代表クラスの若手有望株の海外移籍によって、クラブ間でどの程度の金銭が動くのか。そのあたりの相場観が知りたいところだ。

「コロナ以前の相場観ということでお話しすると、完全移籍の場合、日本のクラブが求める違約金は1億5000万円前後(育成費込み)。ただし、それはヨーロッパのクラブの査定とは乖離があります。まして、日本人の場合は環境への順応性を問われ、言葉の壁もある。ヨーロッパの選手より獲得のリスクが高く見積もられます。

 そこで出てきた案が、買取オプションの付いたレンタル移籍。プラス、次のチームにステップアップした際に違約金の数%を支払うというものです。具体的には、最初の1年のレンタルフィーが1000万円、買取オプションを行使して1億円、さらに次のクラブへ移籍した際の違約金の10%を得る権利を持つといった形です。すでにヨーロッパではこのスキームが主流となっており、今後日本でも定着していくでしょう。従来のように一発の違約金でお金をつくるより、中期的なスパンで利益を上げる形に変わっていったほうがメリットは多いというのが私たちの考えです」

「向こう2年間、移籍市場は歪な形に」

 人の移動を制限するコロナの流行は、サッカー界にも深刻な影を落とした。移籍市場もまた変化を余儀なくされる。

「向こう2年間は、移籍市場は歪な形にならざるを得ないというのがわれわれの見解。若い世代の海外移籍が難しくなるのは容易に想像できます。国際大会の延期や中止、合宿の取り止めなどでアピールの機会が著しく減少し、ヨーロッパのスカウトも直接見る機会を失いますから。ネットワークを持たないクラブは、高値を付けた選手がいても売れない状況が続く可能性がある」

 コロナ以前に高い評価を獲得していた藤本は、最終便にぎりぎり間に合ったということか。

「海外でプレーする、欧州チャンピオンズリーグに出るというのは自分の小さな頃からの目標。そこに一歩近づける」と藤本は言い、意気揚々、日本を発った。

 プリメイラ・リーガの開幕は9月19日。来たるリーグ初戦、ジル・ヴィセンテはポルトガルビッグ3のひとつ、スポルティングCPと対戦する予定だったが、両チームにコロナの感染者が出たことでひとまず延期の決定が下された。

関連記事

BACK 1 2 3
藤本寛也
東京ヴェルディ

Jリーグの前後の記事

ページトップ