サッカーの尻尾BACK NUMBER

「シンジ、マドリーに来ないか?」
モウリーニョが香川を誘った日。 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

PROFILE

photograph byTomoki Momozono

posted2013/11/14 10:31

話をするときは饒舌なモウリーニョだが、カメラの前では思いのほかシャイな一面を見せた。

話をするときは饒舌なモウリーニョだが、カメラの前では思いのほかシャイな一面を見せた。

 インタビューをしていると、時として思いがけない発言に出くわすことがある。

 こちらがまったく予期していなかったことを話し始めたり、想定外の意見がでてきたり……。インタビューというものは話の流れをある程度計算して進めるものだけれど、そういった部分に関しては計算ができない。そして本当に面白い話というものは、大体がそんな予期できないところから生まれるものだ。

 今回、10月下旬にロンドンでセッティングしたジョゼ・モウリーニョとのインタビューでもそんなことが起きた。

 取材も終盤に差し掛かった頃のことだ。モウリーニョはふとある話を始めた。

 それは香川真司についてだった。

「実はまだレアル・マドリーの監督だった頃、私はカガワの獲得に動いていた。実際に我々は彼と話をした。ぜひレアル・マドリーに来てほしい。このチームで一緒にプレーしないかと」

モウリーニョが実際に香川と接触していた――。

 香川のドルトムントでの2シーズン目、欧州の様々なメディアにはあらゆる種類の移籍の噂話が出ていた。たしかに、その中にはレアル・マドリーの名前もあった。しかしそれはタブロイド紙の得意な「とりあえず打てばどれかは当たるだろう」的な根拠のない憶測に過ぎなかった。

 チェルシー、レアル・マドリー、バルセロナ、マンチェスター・ユナイテッド、マンチェスター・シティ……。紙面の上で、香川は欧州の幾多のビッグクラブへ移籍寸前だった。

 モウリーニョが実際に香川と接触していた――。

 それはまったく聞いたことのない、新しい事実だった。スペインの『マルカ』紙や、マンチェスターの地方紙『マンチェスター・イブニングニュース』だったら食いついていただろう。

 それでは、モウリーニョが直接コンタクトを図ったこの誘いはなぜ実現しなかったのか。

「ひとつだけ問題があったんだ」

<次ページへ続く>

【次ページ】 トップ下に君臨していたメスト・エジルの存在。

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