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2019-20ブンデス日本人総括。
鎌田大地、長谷部誠、大迫勇也編。 

text by

中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2020/07/18 11:50

2019-20ブンデス日本人総括。鎌田大地、長谷部誠、大迫勇也編。<Number Web> photograph by Getty Images

長谷部誠と鎌田大地が所属するフランクフルトは昨季ほどの躍進とはならなかったが、長谷部が出た際にはやはりチームは引き締まった。

窮地を救った経験とインテリジェンス。

 とはいえ、リーグ戦で思うように結果を残せず、一時は残留争いを演じていたチームを救ったのは長谷部だった。後半戦は出場機会が減っていたが、ヒュッター監督は第28節のフライブルク戦で長谷部を中心とした3バックへ戻すことを決断した。

 あの当時チームに必要だったのは、確かなかじ取りができる選手だ。いつボールを落ち着かせて、素早く攻めるのか。どこへボールを運び、ゴール前へラストパスを送るのか。そのピースとして、長谷部はチームを間違いなく生き返らせた。

 フライブルク戦はミスが続き、一時は1-3とリードを許してしまうが、後半に怒涛の追い上げを見せて3-3の引き分けに持ち込むことに成功した。

 振り返れば、この勝ち点1がチームに大きな自信と意味をもたらした。攻守のバランスが改善されてきたことでチームのリズムが良くなり、リズムが良くなったことで、長谷部の経験とインテリジェンスを活かした読みがさらに生きた。

 相手の攻撃を読み取り、最適なタイミングでボールをカットしていくシーンが繰り返し見られた。そして、長谷部のところでボールを回収できることがわかれば他の選手も思い切ったプレーができる。

 ラスト2試合は日本で膝を手術するため欠場したが、リーグ終盤7試合を5勝1分1敗の好成績で終えたチームにしっかり貢献。総試合数は昨季ほどではないが、それでも公式戦38試合出場は相当の数字だ。

 そしてアジア人最多ブンデスリーガ出場記録をも更新し、チームとの契約もさらに1年延長された。地元メディアが贈った「チーム内最高のサッカープレーヤー」という評価は伊達ではない。

 長谷部は今季も抜群の存在感を放っていたのだ。

自分のプレーができず苦しんだ大迫。

 心配なのは大迫勇也だ。「どうしたんだ?」という言葉が出てきそうになる。

 相手から激しいチャージを受け、身体のバランスを崩してグラウンドに倒れこむ場面が増えた。ポジショニングと身体をぶつけるタイミングをしっかり確保し、颯爽といなして味方に好パスを展開する大迫のプレーを見慣れていたから、余計にそう感じる。ファンも同様に歯がゆい思いをしていたのではないだろうか。

 今季の大迫は自分のプレーができずに苦しんでいた。

 フリーで味方からパスを受けようとしても、パスが出てこない。動き直しながらパスを待つが、ボールを受けても次の動作にスムーズに移れない。ドリブルで持ち込もうとすると足を取られてしまう。出場機会はどんどん少なくなり、ピッチに立つのは終盤のわずかな時間だけになっていた。

 周囲のサポートがあれば、もっと早く調子を取り戻せたかもしれない。だがチームは下位に低迷して、それどころではない状況に陥っていた。

 だからこそ、自力でパフォーマンスレベルを上げるしかなかった。

【次ページ】 シーズン最終盤にようやく復調。

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