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プロ野球では、叫んだっていいのだ。
観客のいない東京ドームで「あっ!」。 

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中溝康隆

中溝康隆Yasutaka Nakamizo

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posted2020/06/22 20:00

プロ野球では、叫んだっていいのだ。観客のいない東京ドームで「あっ!」。<Number Web> photograph by Yasutaka Nakamizo

観客がいなくても歓声がなくても、プロ野球はプロ野球だった。

普段なら数万人がオレンジタオルで。

 巨人が3-1でリードした試合中盤、ドームは冷房が効きすぎて意外と肌寒いことを思い出す。そして、ふと通路が寂しいのは観客がいないのに加え、売り子の姿もないからだと気付いた。野球場で飲むちょっと気の抜けたコーラは最高に美味いんだけどな……。

 もちろん場内の飲食店も営業していない。その楽しみは7月10日以降に予定されている有観客試合までお預けだ。

 試合は原采配もズバズバと決まり、7回にはG打線が爆発して一挙8点を追加して勝負は決まった。10日間の入院生活で直前まで開幕一軍も危ぶまれた坂本勇人の通算152度目の猛打賞や、パーラの来日初アーチが飛び出た瞬間は、思わず静かな記者席で「あっ!」と声を出してしまったが、普段なら数万人の観客が拍手をしながらオレンジタオルを振り回し喜んだことだろう。

 早くそのいくつもの感情がぶつかり合う、いつもの光景が戻ってくればいいなと心から思った。

振り返り記事もいいけれど。

 結局、この開幕カードは巨人の3連勝で幕を閉じ、原監督は通算1027勝まで記録を伸ばした。長嶋監督の持つ通算1034勝超えまで、あとわずかだ。

 現役時代は巨人の4番としてONと比較され叩かれていたアイドル原辰徳が、16歳の時に長嶋2世と呼ばれ、61歳でついに巨人監督として長嶋茂雄の記録を超える……という45年越しの大河ドラマを我々はリアルタイムで目撃することになる。

 開幕延期で先が見えない期間、私はあらゆる媒体で過去のプロ野球を振り返る記事を書いた。新たな発見があったり、それはそれで楽しかったが、やっぱりプロ野球は、「今」が更新され続けるからこそ、過去も光り輝くのである。

 巨人で言えば、もちろん過去の栄光のV9時代は偉大だ。’80年代の地上波ナイター中継視聴率20パーセント超えも凄かった。でも、現在進行形の今の「令和の巨人軍」が一番面白い。

 待ちに待ったプロ野球開幕、もちろんいきなりすべてが元通りというわけにはいかない。だが、しっかりと2020年シーズンの時計は進みだした。野球ファンは明日も夕方6時にテレビの前に座るだろう。

「今」のプロ野球が観られる喜びを噛みしめながら。

 See you baseball freak……

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