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神戸と横浜、ゼロックスの激闘。
これはJリーグ新時代の幕開けか。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byAFLO

posted2020/02/10 11:50

神戸と横浜、ゼロックスの激闘。これはJリーグ新時代の幕開けか。<Number Web> photograph by AFLO

ヴィッセル神戸の巨大補強がついに実を結んでいる。しかし、まだ目指す領域ははるか先にあるはずだ。

飯倉「タイトルを獲って変わったこと」

 横浜は後半開始早々にオナイウを下げ、遠藤渓太を投入して昨季の形に変えたことで息を吹き返し、54分に扇原貴宏のゴールで再度同点に追いつく。

 しかし、69分イニエスタのクロスをクリアしたボールを山口が決めて、再び神戸がリード。しかし、神戸の選手たちの疲労の色が濃くなってくる。73分にエリキの得点で3-3になると横浜の猛攻撃が始まるが、GKの飯倉大樹を中心に守備陣がゴールを死守して、後半終了の笛が鳴った。

 アカデミーから所属していた古巣相手のPK戦で2本をセーブして、神戸に勝利を引き寄せた飯倉はこう語る。

「3失点もしているし、今日がよかったとは言えない。神戸が強くなったわけじゃないし、ただゴールが決まらなかっただけ。マリノス、リーグチャンピオンとの差はあると思う。だけど、失点したあとの空気、テンションが下がらなくなった。そして、ここで踏ん張れば、大きなものを得られる。それを頭で理解するのではなく、細胞レベルで感じられるようになった。それが天皇杯で優勝した、タイトルを獲って変わったこと」

シーズン初戦とは思えぬハイペース。

 ハイプレス、攻守の速い切り替え、シンプルかつ迫力ある攻撃サッカーが丁々発止の試合を生み出し、観客を魅了した。

 シーズン最初の公式戦ということもあって、例年のフジゼロックス・スーパーカップはチームの完成度がまだ高まっていないことも多い。しかし今年は、両チームともに大きなスタイルの変更もなく、数日後にACL初戦を控えていることもあってか、非常に楽しいものとなった。PK戦でのありえない展開もまた一興だろう。

 ディフェンディングチャンピオンとしてシーズンを迎えた横浜は、他チームから対策を練られるに違いない。この日神戸が示したのはそのひとつの策でもあるように思う。しかし、ポステコグルー監督はきっぱりと言った。

「どこが相手でも自分たちのサッカーができるかどうかだ。自分たちがコントロールして、自分たちのサッカーをやることを考える。失点は小さなミスから生まれる。確かに前半はミスも多かったが、サッカーでも人生でもミスは起きる。そこからどうすべきかを学ぶだけだ。自分たちのサッカーをしていれば、ミスは出がちだ。エラーは起きるが勇敢な気持ちでプレーするべきだ」

 そして、扇原もいう。

「ボールを持っている場面が多いから、当然ミスは起きる。そこは気にせずに、ポジショニングなどの問題を修正していきたい」

 どんな対策を講じられても、自身のサッカーを貫き、さらに精度を上げていくことが、横浜のスタンスなのだと感じた。

【次ページ】 ACL出場組の顔ぶれも大きく変わった。

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酒井高徳
ヴィッセル神戸
横浜F・マリノス

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